2021-04-27

日米同盟を基本軸に米中にも直言できる外交関係の構築を

イラスト:山田紳

新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を3月に全面解除し、内閣支持率も回復傾向にある菅義偉首相。初訪米でバイデン米大統領が就任後初めて対面で会談する外国首脳となる。ただ、世界を見渡せば、ウイグル族ら少数民族を弾圧する中国、クーデターを起こした国軍が民間人を殺傷するミャンマーに対し欧米が軒並み制裁を行う中、日本の人権問題への消極姿勢が際立つ。新しい国際秩序づくりへ同盟国・米国にも隣国・中国にも言うべきことを言う場面に直面する日本。政治家にも見識と覚悟が求められている。

鮮やかなデビュー

 菅は相変わらずコロナ対応に大きなエネルギーをとられている。緊急事態宣言は解除したが、感染が拡大する大阪市や神戸市、仙台市などに4月5日から特別措置法に基づく「蔓延防止等重点措置」を初めて適用した。ゴールは容易に見えてこない。

 一方で対米外交では、これまでにない幸先のよいスタートを切った。米大統領が初めて対面する首脳が日本の首相となった前例はない。3月には日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)出席のため、国務長官のブリンケン、国防長官のオースティンがそろって来日した。バイデン政権の閣僚としては初外遊で、その場所に日本を選んだ。

 中曽根康弘や小泉純一郎、安倍晋三ら強固な日米関係を築いた歴代首相は多いが、菅は外交が苦手。だが今までにない鮮やかな「対米外交デビュー」を飾った形となり、菅の面目躍如といったところだ。

 内容も意味があった。2プラス2の共同文書は東・南シナ海で軍事進出を強める中国を名指しで批判し、沖縄・尖閣諸島に領海侵入を繰り返す中国海警局の武器使用権限を明確化した海警法に「深刻な懸念」を表明した。

 当たり前の内容のように見えるが、バイデンが副大統領を務めたオバマ政権が中国に融和的だったことと比べれば雲泥の差で、同じ米民主党政権とは思えないほどだ。日本政府高官は、対中で足並みをそろえた2プラス2について「引き続き日米同盟が強固であることを発信できた」と自賛する。

 裏を返せば、それだけ中国の挑発は危機的状況にあるともいえる。台湾海峡を巡る危機もさることながら、先述の通り、尖閣諸島への海警局による挑発は常態化している。

 共同文書では新疆ウイグル自治区や香港の人権状況について「深刻な懸念を共有」したとも明記した。中国は自治区で100万人以上のウイグル族を強制収容しているとされ、言語や文化の「中国化」を進める弾圧はかねて指摘されてきたが、今年に入り、さらに世界の注目が集まる問題となった。

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