2021-04-16

デジタル化やカーボンニュートラルなど 政策の中身と実行力が問われる菅政権

イラスト:山田紳

新型コロナウイルスの感染状況は予断を許さないが、菅内閣の支持率は下げ止まり、微増傾向になりつつある。自信をつけ始めた首相の菅義偉が4月末にも衆院解散・総選挙に踏み切るとの観測が永田町ではささやかれる。一方、肝心のデジタル化や2050年のカーボンュートラルの実現など大きな課題の進ちょくはおぼつかない。総務省官僚への接待スキャンダルも菅にとってはアキレス腱だ。菅にとっては苦しい政権運営が続く。

待ったなしの課題

 日本が抱える課題を挙げればきりがない。少子化、ジェンダーギャップ、貧富の格差、デジタル化の遅れ、デフレ、農林漁業の衰退、環境問題、エネルギー問題、巨額の財政赤字……。

 日本には大きく変わるチャンスが平成に入って以降、大きく言えば3回あった。最初のチャンスはバブル崩壊。2回目はリーマン・ショック。そして2011年3月の東日本大震災。未曾有の危機をバネに、大きく経済社会構造を変化させる、あるいは企業のありようを変化させるチャンスだったが、残念ながら日本は大きく変われず、昭和の右肩上がりの栄光にすがり続けてきてしまった。

 安倍晋三前政権はこうした課題にアベノミクスを掲げて挑戦した。具体的には、「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」の2本の矢でデフレからの脱却を図り、3本目の矢で「成長戦略」に道筋をつけるというのが狙いだった。だが、安倍政権は成長戦略を描けないままに昨年、終わった。

 そして、今のコロナ禍だ。経済は大変なことになってしまっているが、この痛みをただ単に痛みとして終わらせるのではなく、大きく変わっていく契機にしていかなければならない。

 昨年9月に誕生した菅政権はこうした問題にアプローチするために、2つの大きな柱を打ち出した。1つがデジタル庁の設置をはじめたとしたデジタル化であり、もう一つの柱が50年のカーボンニュートラルだ。

 コロナ禍で日本政府のデジタル化の遅れは白日の下にさらされた。各国で給付金が素早く給付されていく中で、日本の対応は非常に遅れた。こうした反省に立ち、政府・地方自治体のデジタル化を進めるというのが1つの目標だ。ただ、公的セクターのデジタル化だけでは、成長戦略には全く結びつかない。むしろ本丸は民間セクターのデジタル化だろう。

 中国では、政府の科学技術予算と民間投資を合わせた研究開発費は40兆円を超えた。25年までに約65兆円にまで増やし、米国に並ぶことが次の目標になっている。米国もこうした中国の動きに警戒感を強めている。民間に任せるだけではなく、政府も積極的に関与していくべきだとの声が高まっている。

 デジタル化を巡っては、象徴的な出来事があった。新型コロナウイルス感染者と接触したことを通知するスマートフォンのアプリ「COCOA」を巡る問題だ。厚生労働省が開発を委託したのはパーソルプロセス&テクノロジーで、発注額は3億9036万円だった。

 パーソルはその後、3社に計3億6842万円で再委託した。実に9割超を再委託したことになる。さらに3社からは2社に再々委託され、2社に入った金額は最終的に4193万円しかなかった。

 もちろん委託された先は、それぞれ担当した仕事もあるのだろう。だが、実際に最も工数をこなしたところはどこだったのか。中抜き構造は必要だったのか──。こうした問題を解決しなければ、税金に巣くう生産性の低い民間という構造は変わらない。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事