2021-04-27

日米同盟を基本軸に米中にも直言できる外交関係の構築を

イラスト:山田紳



 この間、日本の国会は別世界のような論戦を展開した。総務省では幹部らが放送事業会社「東北新社」やNTTの幹部との接待会合に出ていたことが発覚し、野党は厳しく追及した。政府提出法案の条文などの誤記も相次ぎ、政府は謝罪に追い込まれた。

 いずれも弁解の余地のない失態だが、3月の21年度予算成立までの論戦で、中国やミャンマーの人権問題が大きく扱われることはなかった。

 一方で、自民党を中心とする超党派の議員連盟は、中国の人権改善を求める国会決議を4月上旬にも行う計画を立てていた。ところが、伝統的に中国との太いパイプを持つ公明党から首相訪米前の決議に「待った」がかかり、先送りとなった。

 与党関係者によると、中国側から公明党側に要請があった。首脳会談で中国に対し日米が強硬な姿勢で足並みをそろえる前に、国会決議で日本がその音頭をとることを嫌ったからだという。

 公明党代表の山口那津男も3月30日の記者会見で「人権侵害を、根拠を持って認定できるという基礎がなければ、いたずらに外交問題を招きかねない」と述べ、制裁に慎重な考えを示した。

 自民党幹事長の二階俊博も中国にとって不都合な問題に口を閉ざす。3月15日の記者会見で、ウイグル族らへの弾圧是正を中国に働きかけるかどうかを問われ、「機会があれば議題にしてもいい」と語った。これには前段があり、「私から言及するつもりはない」とも述べた。

 昨年7月、尖閣への領海侵入や人権問題を理由に中国国家主席の習近平の国賓訪日中止を求める決議を党外交部会などがまとめたとき、二階は周囲に「日中関係を築いてきた先人の努力を水泡に帰すつもりか」と不快感を示した。

 親中派という立場であっても、時に中国に改善を求めて物申す場面は今度も出てくるだろう。また、日米同盟の相手国・米国にも中国と同様、是々非々の判断を下し、議論もし、直言していくことが求められる。

 国際社会の秩序づくりへ政治家も覚悟を持って取り組むべきときに来ている。 (敬称略)

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