2021-04-19

日本病院会・相澤孝夫会長が語る”なぜ「松本モデル」が成功したか?”

相澤孝夫・日本病院会会長(相澤病院最高経営責任者)



 ─ その中で日本には約8千の病院があり、そのうちの8割は民間病院です。コロナ対応は主に公立病院が行いましたが、この民間病院と公立病院の連携をどう進めるべきですか。

 相澤 全国の病院の中で急性期の患者さん、コロナで言えば急性期の重症・中等症の患者さんを診られる機能と施設設備、それに対応できる職員を備えている病院はいくつあるかというと、実は統計がないのです。

 厚生労働省の統計を見ると、病院は一般病院、精神病院、療養型病院、感染症病院と分けられているのですが、一般病院とは、かつて「その他」に分類されていた病院です。これが70000超あるのですが、この中には「回復期病院」と言われる回復期リハビリテーション病院なども含まれています。この病院に感染症の急性期の患者さんを診てくれと言えるでしょうか。

 それなのに、一般病床のベッドが98万床あるのだから、重症者患者も受け入れることができるはずだというのはおかしな話です。間違ったデータ、あるいは確かでないデータで何かを言うと感情だけの問題になってしまうということです。そこをしっかり見て病院ごとの連携を進めなければなりません。

 ─ その連携という点では、相澤さんが経営する相澤病院がある「松本モデル」が成功事例と言われていますね。

 相澤 私たちは30年くらい前から松本医療圏の中で、救急医療と災害医療について皆で話し合ってきました。救急医療災害対策委員会を作り、医療圏にある各病院が委員会のメンバーとなって来年度の救急医療の体制をどうしていくか話し合ってきたのです。各病院の医師や看護師、事務員などにも参加してもらい、各病院で起こった事例や困った事例を発表し、この医療圏では、こういう事象についてはこう対応しようということもきめ細かく決めてきました。

 災害に対しても、どこの病院がどんな役割をするかも全部決めてきました。救急では広域消防局にも入ってもらいました。そうすることを続けてきたことで、各病院の強みや弱みが次第に分かってきたのです。ですから、搬送する方もこの病院にはこういう患者さんを頼めばいいということが分かってきたと。


24時間365日体制の救急医療を中心に、先進的ながん治療施設なども整えている「相澤病院」(長野県松本市)

 ─ 長年にわたって連携の実績を積み上げてきたのですね。

 相澤 そうです。コロナでも2月にパンデミックになるという情報が入り、保健所や行政にも参加してもらいました。何度か議論を重ねて、4月には「松本医療圏新型コロナウイルス感染症入院病床調整計画」をつくり、コロナの感染拡大のレベルによってベッドを増やしていこうという形になりました。

 松本モデルの特徴としては、レベルによって病院の参加を増やしてベッドを増やしていったことです。最初から何床と決めてしまうと非常に非効率になってしまうからです。重症と最重症を分けたり、疑似症患者さんをどうするか、あるいは発熱外来をどうしていくか。また、透析の患者さんや子供の患者さんといった特殊な患者さんについても役割を決めていきました。

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