2021-04-12

【患者主体の医療を実現へ】 データの利活用で病院経営の改善促すメディカル・データ・ビジョン

岩崎博之 メディカル・データ・ビジョン社長

国民の4人に1人に相当する診療データを保有



「データの利活用で医療の質を向上させ、患者のメリットを生み出すことが当社の使命。創業以来、データの発生源となる病院との信頼関係を地道に築き上げ、徐々に診療データを預けてもらえるようになり、今では当社が保有する医療ビッグデータ規模は3451万人(2020年12月時点)と、国民の4人に1人に相当するまでになった」

 こう語るのは、メディカル・データ・ビジョン(以下、MDV)社長の岩崎博之氏。

 同社のビジネスモデルは大きく二つある。一つは、医療機関向けの経営情報分析システムの開発。病院に経営システムを提供することで、導入費や月額保守費をもらい、診療情報を預けてもらうというものだ。

 特徴的なのが、患者数や入院日数、薬の処方などの各指標を、診療科や疾患別に他の病院と比較(ベンチマーク)することができる分析システム『EVE』。他の病院との経営情報を比較できるため、自院の傾向や特徴が明らかになるので、自分たちの病院にはよそに比べて何が優れていて、何が足りないのか。そうしたことが理解できるようになっている。

 日本にはDPC病院と呼ばれる、救急車が止まるような比較的大きな病院が約1750施設あるが、同社のEVEを導入している病院数は772(同)。DPC病院の実に45%をカバーしている。

 もう一つは、ここで集めた情報を基に、製薬会社や研究機関、保険会社に分析データを提供し、調査費用をもらう仕組み。このデータが薬の副作用の研究などに役立っている。同事業は年率18%伸びているそうだ。

 今後は医療分野でのビッグデータの活用が進むことが予想されており、同社の調査によると、医療データを活用した市場は2016年の80億円から2025年に8千億円に拡大すると予想している。

「社名の通り、われわれは医療データを集めることが仕事だから、病院といかに連携し、データを提供していただけるかが大事。(起業した)18年前は、医療データを外部に出すなんてことはご法度中のご法度で、最初は話を出しただけで怒られるような時代だった。しかし、全国の病院の約7割が赤字と言われる中で、中規模以上の病院は制度改正がいろいろあって生き残るために必死。地道に信頼を勝ち取ることを続けた結果、徐々に理解されてきた」(岩崎氏)

 岩崎氏がMDVを設立したのは2003年。もともとはIT企業の出身。IT業界から見ると、医療の世界はIT化が遅れている業界の一つであり、「データを集めてエビデンスをつくり、医療の質を高めていくことができれば医療業界に貢献できる」と考えて起業した。

 同社は2014年に東証マザーズ、16年に東証一部上場。

 20年12月期の連結業績は、売上高45億円(前期比13・7%増)、営業利益11億円(同41・6%増)、最終利益7億円(同26・3%増)と増収増益。売上高営業利益率は25%と高水準にある。

「医療は岩盤規制の象徴だというイメージがあるのは事実だが、今はかなり変わってきた。病院の先生にカルテって誰のものって聞いたら患者のものだって答えるし、海外では医療データを活用するのは当たり前。日本の医療業界はIT化に遅れているので、われわれのようなIT屋が入ることによってできることは沢山ある」(岩崎氏)

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