2021-04-01

内政はコロナ、外交は対中国関係 微妙にすれ違う日米の基本認識

イラスト:山田伸



 これほど似ていると、菅の今後の政権運営を見通すには、麻生政権の足取りを振り返ることも無意味でもなさそうだ。

 ある閣僚経験者は「菅政権は麻生政権と同じ道を辿るのではないか。菅では『選挙の顔』にならないと、菅が衆院解散を決断する前に自民党総裁選の前倒し実施を求める声が強まるのではないか」と語る。

 麻生政権時代の09年6月の千葉市長選は、自民党が推薦した候補が敗北し、名古屋、さいたまに続く政令市長選「3連敗」となった。その結果、総選挙の前哨戦と位置づけられた翌7月の東京都議選を前に「麻生おろし」が表面化する。

 自民党が都議選で敗北すれば、野党を勢いづかせてしまい、総選挙は逆風の中で厳しい戦いを強いられる。一気に党内に危機感が広がり、新たな「選挙の顔」を選ぶため党総裁選を前倒し実施することを求めて一部の中堅若手議員が賛同者を募り始めたのだ。

 菅政権も地方選で敗北が目立っている。21年度予算の年度内成立が確実となった2月下旬、永田町に1枚のペーパーが出回った。「自民党所属国会議員」に宛てられたもので、出所は不明だ。「総選挙前に党則第6条第1項(総裁公選規程)に基づく総裁選挙の実施を求める会」とだけ記されている。そのA4判の紙には、東京パラリンピックが閉会(9月5日)した後の具体的な総裁選、総選挙の日程が書かれている。
 ・9月7日 党総裁選告示
 ・9月20日 党総裁選投開票
 ・9月22日 臨時国会で首班指名 党役員人事、組閣
 ・9月27日 解散
 ・10月12日 総選挙公示
 ・10月24日 総選挙投開票

 もともと菅が描く解散戦略は、新型コロナワクチンの接種にめどをつけ、世界的なスポーツイベントの東京五輪・パラリンピックで盛り上がった直後に衆院解散に打って出る─だとされる。

 そんな菅の狙いに近い日程で、簡易版でない党員投票を行う「フルスペックの総裁選」を衆院解散前に実施すれば、さらに有権者に注目される。それだけに、菅の総裁再選の道筋をつけるために、総裁選前倒し論を牽制しながら、党内の引き締めを図ったようだ。

 菅にとって、4月25日に行われる衆院北海道2区、参院長野選挙区の両補欠選挙と参院広島選挙区の再選挙で3連敗すれば、「菅で衆院選は戦えない」と「菅おろし」を警戒した動きといえる。

 ただ、出所不明だったことも手伝って、「党総裁選を前倒しする用意があることを暗に示し、『菅おろし』の布石を打ったのではないか」との見方もくすぶる。

 菅の肝いりの政策であるデジタル庁設置を柱とするデジタル改革関連5法案が3月9日に審議入りしており、これが成立すれば「衆院解散のフリーハンドを得られる」(与党幹部)とされる。「菅おろし」が始まる前に「不意打ち解散」を仕掛ける可能性もある。

 新型コロナの感染状況によっては、東京五輪が開会(7月23日)する直前の都議選との「ダブル選挙」に踏み切ることも否定できない。

 もっとも、菅政権と麻生政権が似ているとはいえ、異なるところの方が多い。

 麻生政権時代は自民党への逆風がやまず、内閣支持率は下降曲線を辿った。共和党から政権交代を果たした民主党のオバマが08年の大統領選で「チェンジ! 」などのスローガンを掲げたこともあって、当時の民主党も自民党からの政権交代(チェンジ)の勢いに乗っていた。

 その結果、09年7月12日の都議選で自民党は惨敗した。麻生は党内の「麻生おろし」を封じ込めようと衆院解散に踏み切ったが、民主党に政権を奪われてしまった。

 今はどうか。菅の支持率はV字回復とはいえないものの、下げ止まっている。何より野党に追い風が吹いておらず、野党第一党の立憲民主党の支持率は「低空飛行」を続けている。そのため、自民党内の総選挙に対する危機感はそれほど大きくはなっていない。

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