2021-04-01

内政はコロナ、外交は対中国関係 微妙にすれ違う日米の基本認識

イラスト:山田伸



 米国では、バイデン政権が地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」への復帰や、世界保健機関(WHO)脱退の撤回など前大統領、トランプが進めた政策の大幅転換を図っている。しかし、対中制裁関税撤廃へ向けた動きは見られず、対中外交はトランプの強硬路線を踏襲しているように映る。

 トランプ前政権の国務長官・ポンペオが、中国政府による新疆ウイグル自治区での少数民族に対する抑圧を「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定したことに、バイデン政権の国務長官・ブリンケンも「同意する」と表明した。ブリンケンは対中関係を「21世紀の最大の地政学的な試練」とも位置づけており、強硬姿勢をとっている。

 バイデン自身も2月16日の演説で「(中国に対し)人権問題で声を上げなければならない」と強調し、香港やウイグルの人権問題で対決する姿勢を示している。

 これに対し、中国外相の王毅は3月7日、全国人民代表大会(全人代)に合わせた記者会見で米国のジェノサイド認定について「徹底したでたらめ。完全にデマだ」と反発した。そして「根拠のない非難は受け入れない。中国の核心的利益の侵犯は許さない」とバイデン政権を牽制した。

築けるか良好な関係

 そうした中、日本外務省は自民党外交部会で「日本としては『ジェノサイド』と認めていない」との認識を表明した。外相の茂木敏充も「日本もウイグル自治区の人権状況を深刻に懸念している」と述べるにとどめた。

 日本は、集団殺害などの防止や処罰を定めた「ジェノサイド条約」に加盟していない。条約では集団殺害を防ぐためには他国にも武力介入することを認めているため、現行憲法では侵略行為に当たることから加盟できない。日本政府としてジェノサイドの定義を明確にできないでいるのだ。

 バイデンは3月4日に公表した安全保障戦略の指針で、中国やロシアに対抗するため、日本やヨーロッパの同盟国との関係を強化する方針を掲げた。4月に予定されるホワイトハウスでの日米首脳会談は、インド太平洋地域への影響力を増す中国に強固な同盟関係を見せつける狙いがあるとされる。その一事例として尖閣問題がある。

 与党関係者は「人権問題などで日米両国が足並みを揃えるため、日本に厳しい要求を突きつけてくる可能性はある」と指摘する。バイデンとの直接会談をきっかけに菅は難しい外交の舵取りを迫られかねない。

 さて、麻生は09年2月のオバマとの直接会談後、こう語っている。

「世界の抱える現状を含めて一緒に手を携えてやっていける、信頼に足る指導者だという印象をもった。日米同盟が『コーナーストーン(礎)』という話を含めて。今後とも色々な問題を率直に話し合える信頼できるリーダーだ」

 菅もバイデンとの良好な関係を築けるのかどうか。日本だけでなくアジア、太平洋の未来も方向づける直接会談となりそうだ。 (敬称略)

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