2023-07-04

東レ・大矢光雄新社長の決意「成長領域開拓へ、研究・技術に加え、営業にも『横串』を刺していきたい」

大矢光雄・東レ新社長

「航路を間違えないように舵を取り、荒波に向かっていく」─こう話すのは東レ新社長の大矢光雄氏。2023年6月、東レでは13年ぶりに社長が交代する。その大矢氏は「繊維営業一筋」だが、今まさに会社に必要なのが「営業力の強化」だと強調する。部門間で横串を刺し、持ち前の素材の技術力との相乗効果を高めていく考え。大矢氏が考える経営の形とは─。


全社一丸となって難局を乗り切る

 ─ コロナ禍、ロシア・ウクライナ戦争、そして欧米の金融危機と非常に先行き不透明な中での社長就任ですが、どういう思いを持っていますか。

 大矢 厳しい経済環境の中での船出です。船長がしっかりしないと荒波に呑まれますから、緊張の中でのスタートとなります。具体的には、企業理念実践のため、2050年に実現する「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定しました。前中経でも確実に課題は進捗しましたが、収益面では苦戦しました。今年から新たな中期経営課題がスタートします。きちんと航路を間違えないように私が舵を取り、荒波に向かっていく。そして全社一丸で難局を乗り切っていきたいと思います。

 ─ 大矢さんは繊維営業の出身で、東レに必要な力は営業力、マーケティング力だという話をしていますね。

 大矢 前の中経である「AP―G 2022」では反省点があります。戦略的に拡大する成長領域での売り上げ収益については目標に対して、ある程度クリアしたのですが、事業利益の部分が大きく未達になったのです。

 要因としては、原燃料価格の高騰分の価格転嫁ができなかったこと、もう1つは設備投資の刈り取りの時期でしたが、マーケットの変動を受けて、数量を上げることができなかったことが大きかったですね。これらは反省点です。

 この2つの要因とも、営業戦線の売り抜き、マーケティングの方法など、いま一度反省の上に立ってきちんとやっていけば、確実に収益もついてくると考えています。

 ─ 反省を次に生かしていくということですね。この数年、市場環境は大きく変わりました。

 大矢 ええ。例えば自動車です。内燃機関から電気自動車(EV)へのシフトによって、我々が提供する部材が高機能化していく。樹脂でいえば、さらに難燃性を高めたものになると。

 また、我々は素材メーカーとしてティア1(一次請け)向けのダイレクトの営業をきちんとやっています。ただ、自動車メーカーの系列のサプライチェーンが、かなりシフトするなどマーケットに変化が起きています。

 ただ、我々はどうしても縦割りで仕事をしており、これは深掘りにはいいのですが、マーケットの変化対応へのスピード感が若干弱かったという反省点があるんです。

 その意味で、グローバルで横断的に対応できる組織、対応力が求められている。そこで昨年6月に「マーケティング部門」を新設しました。その中に組織横断で対応すべき成長領域を念頭に「ネクストモビリティ室」も立ち上げました。

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