2023-07-04

東レ・大矢光雄新社長の決意「成長領域開拓へ、研究・技術に加え、営業にも『横串』を刺していきたい」

大矢光雄・東レ新社長




原点に返って戦略的な値付けを

 ─ 東レは技術に強みのある企業で、部門横断的な開発に特徴がありますね。それを営業でも進めていくと。

 大矢 ええ。技術面では「技術センター」という組織があり、部門横断的に素材を創出できるように横串を刺しています。それに対して営業側が、その体制と連携してできていないことが課題だと考えてきました。

 そこに先程お話した新組織を立ち上げて、マーケットとサプライチェーンの変動に対して、我々の商材をタイムリーに拡大販売できる体制を整えてきました。さらに昨今のサステナビリティの流れの中で、環境関連製品に対するマーケットからの要請が強いんです。

 技術的には繊維、フィルム、樹脂などをリサイクルするイノベーション技術を持っていますが最終的には、バイオ関係の商材をいかに循環させるかということが重要になります。また、事業化していくためには、リサイクルの静脈ルートを構築していけるかどうかが問われます。これは営業の仕事だと思うんです。

 そこで新設したマーケティング部門の中に「環境ソリューション室」を新設し、成長領域に対して横串を通して、事業として成り立たせるための取り組みを進めています。

 ─ 近年は世界的なインフレの流れを受けて、製品価格をいかに上げていくかが問われています。どう対応していますか。

 大矢 価格の部分は非常に重要です。いま一度原点に返って、我々の商材がお客様にとってどういう価値があるのかという戦略的なプライシングに取り組み始めています。これによって研究開発、生産エンジニアリング力に加えて、営業のグローバルなオペレーション力をさらに強化したいと考えています。

 当社は1955年に香港に商事会社を設立し、この時からすでに縫製オペレーションをスタートさせました。1960年代にはアジアの拠点づくりを進め、その後の中国、米国、欧州、さらにはインドにまで連綿とグローバル展開が続いています。その意味で、グローバルなオペレーションが他のメーカーと比較しても充実している。これは我々の財産です。

 今後はそれをさらに効率化し、DXを含めて見える化していく。さらにお客様にとっても「WIN」であることが前提ですが、バリューチェーンの延伸を踏まえて我々の商材を高次の領域にまで持っていくことで、我々が得ることができる利益を大きくしていきたいと思います。

 ─ 東レでは、繊維事業を「3次元経営」と表現して取り組んできましたが、今後どのように発展させますか。

 大矢 素材、商品、グローバルサプライチェーンという3つの軸を連携しながら、事業拡大を進めてきました。今後は先程申し上げた成長領域を拡大することで、体積を大きくしていきたいと思います。

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