2023-06-19

辻慎吾・森ビル社長「国際都市として東京にはポテンシャルがある! 人口減の中で都市間競争に勝つ街づくりを」

辻慎吾・森ビル社長

コロナ禍を経て都市は、オフィスはどうあるべきか─。2023年は森ビルにとって六本木ヒルズ20周年、虎ノ門ヒルズの完成、そして麻布台ヒルズの竣工というエポックな年。コロナ禍を経て、働き方が変わる中、「やはり新しいものを生み出すにはリアルが大事」と森ビル社長の辻慎吾氏。人と人とが対話する中で、新たなものを創り出していく。そのための「場」がオフィスだということ。辻氏の考える、これからの街づくりは。


20年経っても街の「鮮度」を保つ

 ─ 2023年は森ビルにとって、2つの大きな再開発が竣工を迎える年ですが、「六本木ヒルズ」が誕生して20年という節目の年でもありますね。

 辻 ええ。六本木ヒルズは22年12月、23年3月と立て続けに商業での1日の過去最高売り上げを更新し、1日の人出も最高は22年のクリスマスイブでした。一般的に、20年も経てば街の力は落ちていくものですが、六本木ヒルズが記録を更新しているというのは嬉しい話です。

 全く行ったことのない新しい街ができるわけですから、街の「鮮度」はオープンの時が一番です。そこを頂点に鮮度は落ちてくるわけですが、六本木ヒルズの場合、お客様、来街する方々との「絆」というのは上がっているんです。

 ─ 森ビルは、その「絆」をつくる取り組みをしている?

 辻 そうです。そうして1回訪れて「いいな」と思うと、また来て下さる。高級ブランドのお店はいろいろなところにありますが、街をきちんと運営していれば、「六本木ヒルズで買おうか」という形で絆が上がっていくんです。

 街の鮮度も、お店を入れ替えたり、季節ごとのイベントを開催することで上げていく。そこに絆が上がっていけば、足し算で街の魅力が上がっていきます。六本木ヒルズは、街の鮮度を保ちながら、人々との絆を深めるという取り組みを戦略的に進めてきました。

 それは森稔(森ビル元会長)が牽引してディベロップメント(開発)を進める段階から、その後の「タウンマネジメント」まで、一括で進めるという考えがあったからです。ディベロップメントからタウンマネジメントまでを一気通貫で取り組んだ街は世界的にもなかったんです。

 ─ 1つの街として運営する仕組みを構築したと。

 辻 そうです。その後もいろいろな街づくりを進めてきましたが、改めて六本木ヒルズという街は強いなと感じます。新しい街ができると六本木ヒルズが比較対象に上がることも多いですし、六本木ヒルズの取り組み自体に注目していただけることも増えています。

 ─ オフィス、住宅、ホテル、文化施設がコンパクトに複合した街が必要だというコンセプトでしたね。

 辻 そうです。それが元々の森ビル、そして、森稔の発想でした。そうした街が、多くの方に支援していただいて、使ってもらえるんだということが初めてわかったのが六本木ヒルズだったのではないでしょうか。その後にできた街は多くが複合開発になっています。

 ─ 辻さんは六本木ヒルズの開発にも携わってきましたが、この20年間で嬉しかったことは何ですか。

 辻 例えばイベントを開催した時に、ガラーンとしているのが一番嫌なんです。ですが、六本木ヒルズでは様々なイベントに本当に多くの人が参加してくれます。しかも、この街には外国人が多いですが、そういう方々も来てくれて賑わっている。

 典型的なのは盆踊りですが、外国人を含む来街者だけでなく元々、再開発に一緒に取り組んだ方々が主催者となっていますから、地元の方も来ます。

 六本木ヒルズはテーマパークではなく「街」なんだというのが最初からの考え方です。テーマパークは夢の世界で、非日常を味わいますが、この街には「日常」があります。その中に様々なイベントがありますが、我々が何かを仕掛けた時に多くの方が来てくれて、それが話題になって、さらに多くの方が来てくれるというのは見ていて楽しいし、嬉しいですね。

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