2021-08-19

【三菱グループの改革】 創業150年「旧来のしきたりをなくせ!」 三菱マテリアル社長・小野直樹の意識改革

小野直樹・三菱マテリアル社長


「品質問題の再発防止と立て直しが出発点でした」
 三菱マテリアル社長 小野 直樹(おの・なおき)

社長就任後の構造改革

 2018年6月に社長に就任しましたが、17年11月頃から、当社は品質問題に直面し、品質問題の再発防止をしながら、どう立て直していくかが出発点でした。

 品質問題では対策本部本部長を命じられていましたが、大きく3つの課題があると認識していました。

 1つはコミュニケーションの量も質も不足しているということ。どの階層を見ても目詰まりを起こしている。つまり上から「こういう方針でいくよ」と言ってもうまく下に伝わらない。あるいは、現場から上に伝えなければいけないことが伝わらない、上もそれを受け止めようとしない。どちらの方向から見ても、コミュニケーションの悪さが大きな課題としてありました。

 2つ目は、ガバナンスやコンプライアンスに対する意識や体制が不十分だったこと。3つ目は人、モノ、カネの資源配分が不十分だったことです。

 そこで、組織の階層を越えたコミュニケーションの場を作り、ガバナンスにおいては、予算審議同様、相応の時間をかけて、計画を立てるだけでなく、その後もフォローする〝ガバナンス審議会〟を開いています。予算達成だけでなく、ガバナンスを計画どおりやっていくという両輪でなければいけないと。

 コーポレートガバナンスでは、19年から指名委員会等設置会社に変更しました。会社を変えていくには働いている人だけにそれを求めるのではなく、われわれ、上のほうから変わる必要があると考えました。

 3つ目の資源配分については、色々な事業を幅広くやってきた結果、自分たちの能力ではカバーし切れない範囲にまで事業領域が広がり、人もお金もつけられないけれど「頑張ってね」という状況にもなっていた。自分たちでやるのであれば目が届き、必要だと思うものをきちんと配分できる範囲内でやっていく必要があり、広がり過ぎたものは少し小さくする必要がある。

 ただ、縮小だけでなく、同時に自分たちの能力を高めることも両方やらなければいけない。こうしたことが、今の事業ポートフォリオの最適化につながっています。

 収益性や成長率など数字的なことも大切ですが、「自分たちはこれからどういう会社を目指していくのか」という思いがベースになければいけないと思っています。

MMDX(DX)のポイント

「今を強くする」「明日を創る」「人を育てる」という3つの大きなミッションがあります。「今を強くする」は、例えば、デジタル化で顧客接点や顧客とのサプライチェーンマネジメントを強化したり、安全や品質管理を徹底することです。

「明日を創る」においては中長期的に既存事業をソリューションビジネスに発展させたり、われわれが関わっている上下を含めたプラットフォームをつくり、お客様の利便性を高めていきたいと考えています。

「人を育てる」というのは、カンパニーの要請に応えるだけでなく、システムとしてどうあるべきか、全体を考えた方針を打ち出していくような方向に変わっていかなければいけません。また、そういう人材を育てていかなければいけません。今はDX推進本部で取り組んでいますが、そうした取り組みを継続的にやっていけるような人材育成も同時に進めていきます。

 外部の方の発想が会社全体に大きな刺激を与えているので、それがコミュニケーション活性化という面でも、良い作用を及ぼしてほしいと思っています。

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三菱マテリアル社長
小野 直樹
Ono Naoki
おの・なおき
1957年1月14日愛知県名古屋市生まれ。1979年3月京都大学工学部卒業後、同年4月 三菱鉱業セメント(現・三菱マテリアル)入社。 2014年4月常務執行役員・セメント事業カンパニープレジデント、同年6月常務取締役、16年4月取締役副社長、同年6月取締役副社長執行役員、17年4月取締役副社長執行役員・経営戦略本部長、18年6月 取締役社長、19年6月取締役 執行役社長

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