2021-08-19

【三菱グループの改革】 創業150年「旧来のしきたりをなくせ!」 三菱マテリアル社長・小野直樹の意識改革

小野直樹・三菱マテリアル社長


対話の重要性を実感したベトナムでの工場新設

 小野氏が社長に就任したのは、品質問題が起きた翌年の2018年。社長就任前は品質問題の対策本部本部長として対応に奔走、問題の根底には「コミュニケーションの量も質も不足している」という課題を痛感した。

 社長就任以来、訴え続けてきたのも「身内の論理から抜け出してほしい」ということ。

 構造改革を進める上でも「自分たちの常識は、世間では常識ではないかもしれないというスタートラインに立たないと、本当の意味での改革にはならない」と考えている。

 表面的な変化にならないよう、組織や事業の変革だけでなく、「個人の意識や行動変容につながる人事制度改革」も同時並行で進めている。

 自身の経歴を振り返り、最も印象に残る仕事は、ベトナムでのセメント工場新設だと語る。

「鉱山を開発して、設備を建て、現地で人を採用して、ゼロから事業を立ち上げる。暑い国なので、みんなヘルメットを脱ぎたがるのですが『この鉱山では絶対に許さない』と口酸っぱく言っていたら、外部から資源を運んできたドライバーを『ヘルメットをかぶっていない』と社員が大声で叱っていた。ちゃんと意を汲んでくれているのだなと思い、すごく感動しました」

 良い組織をつくるには、コミュニケーションが欠かせないという原体験だ。

 組織の硬直化、多角化による収益の悪化など三菱マテリアルの抱える課題は、多くの日本企業が抱える課題ともいえる。品質問題を転禍為福として、小野氏が不退転の決意で臨む抜本改革が進む。

なぜ、日本酸素HDはグローバルな再編で勝ち残れたのか?

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