2021-08-13

【政界】追い込まれた菅首相が無投票再選? 総裁選で透ける自民党実力者の思惑

イラスト・山田紳



「必ず裏目に出る」

 同じころ、幹事長代行の野田聖子は福岡市での講演で「バラエティーに富んだ自民党の姿を見せるためには、一般党員による総裁選を必ずやらなければならない」と訴えた。安倍の突然の辞任表明に伴う昨年9月の総裁選では、党員投票に代えて各都道府県連の代表者3人に1票ずつを割り当てた。今回はこうした簡易なやり方ではなく、広く党員に支持を問うよう求めたのだ。

 都議選の投票率は過去2番目に低い42・39%だった。組織政党に有利とされる低投票率でも自民党が伸び悩んだのは、従来の支持層が棄権に回ったためとみられる。同党が敗れた4月の参院広島選挙区再選挙と同じ傾向だ。支持者が離れるのを食い止める手段として、党員投票という主張には一理ある。

 総裁選の施行期日を任期満了の1カ月前までに決定するという総裁公選規程に従い、自民党は8月下旬には結論を出すことになる。ただ、野田の提案に賛同する意見は党内にほとんどない。幹事長の二階俊博に近い閣僚経験者は「コロナ禍での総裁選なんて国民の目にどう映るか。党員投票にはそれなりの準備期間も必要だ」と一蹴する。

 野田はかねてから総裁選に意欲的だが、党内基盤が弱く、他力本願の状況は変わらない。前回、菅と争った前政調会長の岸田文雄、元幹事長の石破茂は同じ7月8日に派閥の政治資金パーティーを開いたものの、総裁選への態度を明らかにしなかった。

 規制改革担当相の河野太郎はワクチンの供給不足解消に忙殺され、環境相の小泉進次郎はすっかり影が薄い。菅に取って代わる人材がいなければ、党員投票など絵に描いた餅に過ぎないというわけだ。

 そう考えると、先の山口の発言の真意が見えてくる。ワクチンが普及するまで衆院選を待ってもらえるなら、公明党は総裁選の時期にかかわらず、菅を支える──。山口は自民党にそうサインを送ったのではないか。

 この状況は二階にとっても好都合といえよう。総裁選にかこつけた「菅おろし」の動きが顕在化しなければ、幹事長ポストを狙う細田派や麻生派に自身の地位を脅かされることもない。

 二階は7月8日、CS―TBSの番組収録で「(総裁選は)淡々と予定通りやった方がいい。(衆院選より)先にやった方がいいとか延ばした方がいいとか、どうすれば(選挙に)勝てるかというのはだめだ。必ず裏目に出る」と語った。主導権は自分にあると誇示したのだ。

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