2021-07-31

【アリババ、テンセント、滴滴に相次ぎ発令】 中国IT企業への当局規制が世界経済に波紋

川島 富士雄・神戸大学大学院法学研究科教授

中国当局のIT企業への相次ぐ規制が界経済に冷や水を浴びせている。世界の証券、金融市場への影響が必至の中、今後の世界経済の行方は──。
本誌・北川 文子 Text by Kitagawa Ayako

市場独占には厳しく対処

 7月2日、中国当局は「国家安全法」と「ネットワーク安全法」の理由で中国配車アプリ最大手・滴滴出行(DiDi)に対する審査を開始した。

 滴滴は2012年に創業。16年には米ウーバーの中国事業を買収し、中国最大手の配車アプリサービスになっている。

 今年6月30日には米ニューヨーク証券取引所に上場したが、その直後、当局からの規制を受け、株価は公開価格の14ドルを大きく下回る価格まで下落。

 滴滴への規制はその後も続き、7月4日には個人情報の収集・使用で重大な法令違反があると指摘され、アプリストアでの配信が停止。新規ユーザーの獲得ができない状況になっている。

 滴滴だけでなく、昨年末から、当局による中国IT企業への規制が強化されている。

 例えば、中国のEC市場で50%以上のシェアを持つアリババは、プラットフォームへの出店企業に対し、ライバル社と取引しないよう「二者択一」を迫ったなどとして、今年4月、独占禁止法違反で過去最大の182億元(約3000億円)の制裁金を課され、2021年1〜3月期は最終赤字に転落した。

 また、当局と良好な関係を維持していると思われていたテンセントも、7月10日、当局が、予定していたゲーム動画配信子会社「虎牙(ピンイン)」と「闘魚(トウギョ)」の合併差し止めを発表。合併が実現すれば、中国動画配信市場のシェア7割を超える見込みだった。

 アリババやテンセントへの独禁法規制、米市場に上場する滴滴などへの取締り強化など、中国IT企業は、当局の方針で成長が左右される事態となっている。

中国問題が日本経済に与える影響

 だが、一連の動きを「単に中国共産党の支配の強化と見ては状況を見誤る」と神戸大学大学院法学研究科教授の川島富士雄氏は指摘。

「アリババやテンセントへの独禁法による取締りは欧米でのGAFAMへの規制の流れと同じ。消費者や競争者を守る規制として展開されている。だが、滴滴への規制は9月に施行される法律を事実上前倒しで適用しており筋が悪い」と語る。

 新たなステージに入った中国のIT規制。国境をまたいだ規制の強化は、世界経済、世界の資金の流れを変える動きにもなりつつある。

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