2021-04-16

デジタル化やカーボンニュートラルなど 政策の中身と実行力が問われる菅政権

イラスト:山田紳



 日本の将来を考える上で、もう一つの鍵は環境投資だろう。50年のカーボンニュートラルの実現に向けて、積極果敢に挑んでいかなければならない。

 欧州などを中心にESG投資が増えており、日本企業もこうした動きと無縁に存立することはできない。地球環境という視点を常に持ち経営に当たらなければならない時代に確実に入っている。

 菅は昨年12月4日の記者会見で、これを達成するための環境投資として「過去に例のない2兆円の基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を今後10年間、継続して支援する」と胸をはって見せた。

 菅は年始の記者会見でも、「環境対応は、もはや経済成長の制約ではありません」と強調。前例のない挑戦をすることが、国内の環境意識の変革も牽引するだろうし、環境こそが競争の最前線であり、ここで勝つことが肝要だという菅の主張は確かにその通りだろう。

 今後、低コストで大規模な水素製造装置の開発や再エネの普及に欠かせない蓄電池の低コスト化、洋上風力発電の推進などに資金を投入するという。また、自動車からのCO₂排出量もゼロを目指すと位置づけられた。

 だが、具体的な政策となるとどうか。2兆円の基金はどう使われるのか?  2兆円で10年間継続的に支援するということは、単純に年額に換算すれば2000億円しかない。毎年2000億円で具体的にどのような後押しができるのか。正にその中身が問われている。

 原発ゼロにかじを切れない政府の姿勢も今後、マイナスに作用していくだろう。「環境対応は経済成長の制約ではない」というのであれば、再生可能エネルギー分野で飛躍的なイノベーションを進めるためにも、原発に頼る現在の政策は転換していかねればならないだろう。

 とはいえ、現存する原発を廃炉にするにしても、100年単位の計画が必要だ。原発を安全、安定的に廃炉を進めるためには技術者も必要だ。政府がこうした問題に真摯に向き合いつつ脱原発を進めていくことが求められている。

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