2021-04-16

デジタル化やカーボンニュートラルなど 政策の中身と実行力が問われる菅政権

イラスト:山田紳



  積み重なるのは国内課題だけではない。日本外交は戦後、常に米国を第一に見てきた。先の大戦で敗れ、日本を占領したのは米国だったことを考えればこれはやむを得ないことだ。

 しかし今、中国が経済だけでなく、地政学上でも大きなプレゼンスを発揮するに至っている。尖閣諸島がある東シナ海のみならず、南シナ海への進出に各国は警戒感を強めている。

 新しい動きは、欧州各国が南シナ海に目を向け始めたことだ。先にフランスは艦船2隻を南シナ海に派遣した。米艦船も台湾海峡を通過するなど、緊張は高まりつつある。

 こうした中で、今年初めて日米豪印の4カ国首脳会議(クアッド)がオンラインで開かれた。会議後の首脳コメントは「自由で開かれた」アジアに言及するなど、言外に中国政府を批判する論調となった。

 会議の進行役を務めた米大統領のバイデンは声明で、「この地域が引き続き、国際法に統治され、普遍的な価値観を重視し、威圧のない場所であり続けるため、我々は取り組み続ける」と述べ、中国を名指しすることは避けたものの、菅は中国に対して明確に批判的な態度を示し、記者団に「中国による一方的な現状変更の試みに強く反対することを訴えた」と説明。他の首脳からも支持を得られたとした。中国への向き合い方は簡単ではない。安全保障分野では対峙する場面が増えるだろうが、経済関係はますます相互依存を深めていくだろう。

 日米同盟を基軸としながらも、インド、豪州そして欧州などとの関係性を深めつつ、日本はどう中国との関係を構築していくのか。従来の日米同盟一辺倒では解ききれない連立方程式が突きつけられている。

 政権を巡る状況はまさに外憂内患だが、菅には衆院選という一大政治イベントが待ち構えている。21年度予算は20年度内に成立した。4月に菅は訪米し、初めてオフラインでバイデンとの会談に臨む。さらに、政府が重要法案と位置づけるデジタル庁法案も4月下旬には成立する見通しで、そうなれば衆院解散・総選挙に臨む環境は一応整うことになる。

 内閣支持率も回復基調にある。内閣支持率はスキャンダンル等で上下することもあるが、最近のトレンドは新型コロナウイルスの感染者数と反比例するということだ。感染者数が減れば内閣支持率は上がり、感染者数が増えれば内閣支持率は下がる。総務官僚への接待スキャンダルが噴出しているが、支持率にはさほど影響していない。

 内閣支持率が回復基調になれば、リーダーとしては当然ながら解散の誘惑にかられるだろう。菅も今の状況に自信を持ちつつあると言われており、自民党内では「4月末に解散し、5月下旬の投開票がいいのではないか」との声が出ている。菅政権を支えるキーパーソンである国対委員長の森山裕は「5月投開票はありえる」という趣旨の発言をしている。

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