なぜ今「パーパス」が必要だったのか
─ 近年は雇用の流動性という言葉も出て、すぐに転職する人も増えていますが、これをどう考えますか。
井上 私はいいと思います。今、入社してくる若手は自分のキャリアアップを考えており、オリックスに長くいるという考えはありません。私はそれが正常だと思います。
私は以前から、会社と社員の関係はギブ&テイクだと思っています。社員は会社に貢献する、会社はそれに対して給与をきちんと支払うという関係が大事です。
─ 伸びている社員はどんなタイプですか。
井上 基本的には、自分の意見を持っている人です。ですから私は「井上の言っていることはおかしい」と言ってくるくらいの生意気な人間ほど好きですね。今の幹部にはそういう素養のある人間がいますが、若手クラスでも、そうした人間に育って欲しいと思っています。
そして大事なのは人柄です。良しあしが判断でき、自分のためではなく会社のためにやるんだという意識が必要です。
─ 23年11月に「ORIX Group Purpose & Culture」を導入しましたが、この狙いは?
井上 2000年頃から、企業行動憲章として「EC21」を掲げてきましたが、これは日本人がつくったものでした。今は国内だけでなく海外のグループ会社も増えましたが、彼らがオリックスグループにいることのメリット、意義を考える機会が少なくなっているなという問題意識を持っていました。
そんな時、19年にソニーグループさんがパーパスを導入したわけですが、我々もやるべきだと考え、タスクチームを設けて1年半ほどかけて検討してきました。その時、次世代を担う人たちで議論すべきだと考えて、私は関与しませんでした。
日本語を英訳する時も、海外のグループ社員に見てもらって、意味合いを捉えたものにしました。最終的に、私自身もいいなと思ったものが採用され、よかったなと思っています。あとは、このパーパスを役員含め国内外の社員にどのように浸透させていくのかが重要です。
─ 混沌とした時代ですが、基本軸が大事になりますね。
井上 「フォア・ザ・カンパニー」という考え方は、昔と違って薄くなっているのは事実ですが、私はそれで構わないと思っています。先程申し上げたギブ&テイクでいいじゃないかと。そして、辞めた人間が「やっぱりオリックスがいい」と言って戻ってきたら、喜んで受け入れようというのが私の考えです。