2024-03-14

産業革新投資機構社長CEO・横尾敬介「民間がやれない分野にリスクマネーを供給していく」

スタートアップの育成も大きな役割の一つ



 JICは国家の産業政策実現のために活動している投資ファンドであり、政策目的という点で民間ファンドとは大きく役割が違っている。

 そもそも官民ファンドだから、国のお金で営業活動をするわけにもいかないし、あくまでも国の政策にあった分野で、将来の産業強化を担っていけるビジネスに投資していく。その意味では、民間ファンドほどリターンを優先させてはいない。もちろん、損が出るのはまずいが、国家の産業政策のために活動を行っているというのが第一だ。

 だから、われわれはそこを頭に入れて投資活動を進めなければならない。その上で、民間がやれるものはやってもらい、民間がやれない分野があれば、われわれがリスクマネーを供給していくことになる。

 JICの大きな役割は投資そのものもあるが、一つは人材育成を含めたスタートアップの育成だと考えている。

 日本の投資ファンドは、欧米に比べると4半世紀遅れていて、米国では1970年代初頭に投資ファンドが勃興した。日本は2000年代に入ってからなので30年近くギャップがある。

 GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック=現メタ、アップル、マイクロソフト)の現在があるのは、70年代に勃興したベンチャーキャピタルが育ててきたわけで、データに注目して新たな産業をつくってきた。

 でも、現在、日本の機関投資家は海外のベンチャーキャピタルには投資するけど、日本のベンチャーキャピタルにはあまり投資しない。それはなぜかを辿っていくと、投資実績やキャピタリストの経験、ネットワークなどで海外と比較すると、まだ魅力的に見えていないということ。

 われわれはそれを日本に引き寄せたいと考えていて、ファンドマネージャーの質を上げ、数も増やしていきたい。質を上げないと、リターンも少ないということで、今後は今まで以上に教育システムを拡充して、世界と伍していけるファンドマネージャーを育成していきたいと考えている。

 また、ファンド投資する際は、ファンドのトップの倫理観を必ず聞く。トップに会って、トップの倫理観がどうなのか。倫理観があって、人柄が良く、適切な判断ができる人ということをまず見るようにしている。

 人材育成をやるには20年、30年の時間がかかるので、産業競争力強化法の改正による2050年までの期限延長方針は大変ありがたいこと。より中長期的な視点で、日本の政策に沿った産業競争力強化、そして、経済成長を後押し出来るような産業をつくっていきたい。

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