2024-03-25

オリックス社長兼グループCEO・井上亮「変化し続けなければ生き残れない。事業部門に権限を移していく」

井上亮・オリックス社長兼グループCEO




日米の金利動向をどう見るか?

 ─ 地政学リスク、自然災害など、先行きが混沌とする中、2024年は時代の転換期になるとも見られています。今後をどう見通していますか。

 井上 私は24年を保守的に見ています。日本でも金利が上がるという話がある一方、アメリカでは金利が下がるかもしれないとも言われています。

 ただ、日本で金利が上がるといっても、せいぜい1%でしょう。アメリカを見ても、お金が溢れている状況で金利を下げたらインフレが再発しますから、そう簡単に金利が下がるとも思っていません。

 アメリカの金利は下がればOK、しかし、下がらない前提で考えなければいけないだろうと。そして日本は金利が上がったら利払い費など国債が大変ですから、そう簡単には上がらないと思います。

 日本は金利を上げなくてはいけません。しかし本来、この20~30年で財務リストラをしなければならなかったわけですが、何もよくなりませんでした。この状態では、なかなか金利を上げることは難しい。

 ─ 日本で金利が上がった場合、どんな影響が出ますか。

 井上 金利がつかない中では調達コストが安いですから、様々な投資ができました。一方、金利が付いてくると調達コストは上がるものの、オリックス生命やオリックス銀行など金融事業にとってはプラスです。そのバランスを見ながら、事業を進めていくことになります。

 ─ 財政の部分は政治の役割だと思いますが、なかなか本質論議ができていません。

 井上 欧米でも日本でも、資本主義のあり方が議論されていますが、フリーマーケットが資本主義です。これは日本の課題ですが、いわゆる「ゾンビ企業」が多い。本来マーケットで粛々と調整しなければならないところ、それが機能していません。

 ですから我々はこれまで、マーケットの外で利益を上げることを目指してきました。プライベート・エクイティ(PE、未公開株)で投資し、上場するか、売却するかという判断をしてきたのです。

 日本産業パートナーズ(JIP)への出資も上場を廃止するということで手掛けたものです。もし、上場を維持した形であれば、おそらく我々は投資をしなかっただろうと。

 ─ 上場株に投資しない理由は?

 井上 株というのは思い通りにならないからです。PEは収益を上げれば、それを直接取り込むことができますし、株価がありませんからフェアバリュー(適正価格)の影響を受けないのです。

 ─ その意味で金利は事業の動向を左右しますね。

 井上 ええ。私が入社した頃は、リース料が15%でした。調達金利が10%でしたから、利ざやを5%ほど取ることができました。それが今は利ざやで0.25~0.5%しか取れません。

 それを件数でカバーしようとしても、例えば100件手掛けて、1件でも倒産したら利益が飛んでしまいます。ですから、我々は金融以外のことをやるしかないということで、事業領域を広げてきたわけです。

 ─ 同じ形態の会社は世界にもないと言っていいですか。

 井上 基本的には、我々は他社を参考にしたことはありません。基本的な姿勢として、大手のファンドなどが出てこないような、企業価値1000億円規模の領域を狙っています。

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