2023-11-29

富国生命保険社長・米山好映「何が起きてもお客様との契約を守り続ける。それが生命保険事業の本質」

米山好映・富国生命保険社長

「契約者とのお約束を守るために、利益を上げ続ける」─米山氏はこう強調する。今年、創業100周年を迎えた富国生命保険。規模を追わない独自の経営。何より利益率や財務の健全性を大事にしたいと強調「ご契約者本位」を標榜し続けている。「最大たらんよりは最優たれ」という富国生命の経営哲学は、どのように生まれたのか─。


「営業と資金の運用は今まで通り切り離す」

 ─ 世界の経済状況、金利動向など、先行きが不透明ですが、こうした環境変化の激しい中で、富国生命は100周年を迎えたわけですが、改めて生命保険会社の役割をどう考えていますか。

 米山 我々、生命保険会社は保険の営業と、お預かりした保険料で資産運用をしていくのが車の両輪と言っており、本質的な問題です。

 ですから当社でも、富国生命投資顧問というアセットマネジメント会社を持っています。現在、同社の社長は富国生命で債券運用を担当していた人間が務めていますが、これは極めてリーズナブル(適正)な話です。資産運用は生命保険会社としての我々の本業だからです。

 しかし商業銀行や証券会社は役割が違います。商業銀行はまさに融資のプロですし、証券会社はブローカーですから売買のプロなんです。

 ─ ただ、一般の消費者は金融機関であれば資産運用ができるのではないかと思う人が多いのではないでしょうか。

 米山 ええ。日本では銀行や証券会社が子会社として資産運用会社をつくって、社長を送り込んでいますが、それに対して今、金融庁が強く批判しています。本来、アセットマネジメントは独立したものなのに、子会社で銀行の人間、証券会社の人間が社長をやっていることに対する批判です。

 ─ 来年から新NISA(少額投資非課税制度)が始まるなど、多くの人が資産運用に関心を持っていますが、資産運用の本質を見直す時ですね。

 米山 そうです。その認識から始めないと、日本の資産運用はうまくいかないと思います。

 私は生命保険会社の運用畑出身ですが、銀行や証券会社の人達が、知識だけでアセットマネジメントを語ってくるという体験を何度もしています。

 100周年を機に、様々な資料を読み返しているのですが、当社の第6代社長の古屋哲男が、1971年(昭和46年)の社長就任時に答えたインタビューでは「営業と資金の運用は、今まで通り切り離す」と話しています。要するに、株式の持ち合いで何かをするということはやらないと言っているのです。

 ─ 今、政策保有株式の削減が言われていますが、1970年代にすでに言っていたと。

 米山 古屋は株式を運用してきた人間で、そうやって育ってきたからです。この10年ほど、日本では政策保有株の削減、持ち合いの解消が盛んに言われますが、当社では1971年の段階で「今まで通りやらない」と言っているんです。

 株取引の基本は安い時に買って高い時に売るというところにあります。株式の運用、あるいは融資をやっていく上で、そこに営業が絡んでしまったら、株を売ったり買ったりできないわけです。

 大手損害保険会社による価格調整問題に関する報道を見ていたら、契約している企業は持ち合いをしている大手損保を優先的に採用する傾向が強いと書いてありました。株の持ち合い先であれば、保険料は必要経費に近いという感覚になります。この持ち合いについて、未だに日本は変わっていない。

 かつての生命保険会社も、各社が企業の株を保有して、団体保険の契約をお願いしたりしていました。各社がまだ2桁成長をしていた時代で、そうやってみんなが大きくなっていったのです。しかし、富国生命はそれをやらず、切り離せというわけですから、営業は大変でした。ですから、富国生命の規模は大きくなっていません。

 ─ しかし、生保の本質を考えると、それでいいのだということですね。

 米山 そうです。バブル経済期に、古屋が「株を買うな、不動産も買うな、一時払い養老保険はストップだ」と号令をかけました。これによって総資産の順位ではどんどん他社に追い越されていきましたが、「そんなことは関係ない」といって押し通したんです。あのバブルに乗らなかったということで今、皆さんがすごい話ですねと言ってくれます。

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