2022-09-07

【政界】旧統一教会問題と新型コロナが足かせに 最大の危機を迎える岸田首相

イラスト・山田紳



行方を占う9月

 皮肉なことに、9月は重要な政治テーマが目白押しだ。

 岸田政権が重視してきた沖縄県知事選は11日に投開票される。今年に入って県内の市長選で与党系が4連勝し、県政奪還へ着々と布石を打ってきたが、7月の参院選では野党系無所属の現職、伊波洋一が自民党新人に辛勝。知事・玉城デニーの再選を目指す「オール沖縄」陣営は何とか踏みとどまった。

 知事選は玉城、与党が支援する前宜野湾市長の佐喜真淳、元衆院議員の下地幹郎の三つどもえの争い。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の賛否だけでなく、新型コロナで打撃を受けた県内経済の振興でも激しい論戦が展開されている。

 オール沖縄陣営の勢いには陰りが見えるものの、自民党幹部は「ここにきて岸田政権の失速は痛い」と危機感を強める。勝敗は予断を許さず、結果は国政にも一定の影響を与えそうだ。

 29日には日中国交正常化50周年を迎える。国家安全保障局長の秋葉剛男は8月17日、中国外交担当トップの楊潔篪と天津市で会談し、冷え込んだ両国関係の打開を探り始めたが、台湾情勢が緊迫する中、一足飛びの改善は見込めない。岸田が外交で得点を稼ぐのは難しい状況だ。

 安倍の国葬の扱いも難しくなった。報道各社の世論調査では反対が賛成を上回っているが、さりとて今さら延期や中止とはいかない。岸田が国葬を表明したのは銃撃事件のわずか6日後で、「あんなに急ぐ必要はなかった」(自民党幹部)と悔やんでも時すでに遅し。岸田は丁寧に説明を尽くすしかない。

 支持率回復の特効薬はあるのか。8月24日、自身が新型コロナに感染していた岸田はオンラインで新たな方針を打ち出した。しかし、目を引いたのは感染者の全数把握の見直しによる医療機関の負担軽減ぐらいで、入国者数の上限(1日当たり2万人)引き上げや、感染者の療養期間短縮に関しては「速やかに公表する」と明言を避けた。内閣官房幹部は「首相が自ら発表するほどかという意見は事前に内部であった」と肩を落とした。

 窮余の一策として衆院の早期解散説すらちらつき始めたが、元幹事長の二階俊博は8月下旬、ある講演会で「(黄金ではなく)緊張の3年間であってもらいたい。どうなるかわからないけどやってみようという解散は困る」と一蹴した。正念場の9月。岸田の指導者としての力量を、永田町も有権者も注視している。
(敬称略)

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