2022-09-07

【政界】旧統一教会問題と新型コロナが足かせに 最大の危機を迎える岸田首相

イラスト・山田紳



人事を急いだツケ

 当初、内閣改造は9月上旬が有力視されていた。参院選後の臨時国会が閉会した8月5日、報道各社が「10日にも人事」と速報すると、首相周辺は「サプライズではない」と強がったが、新型コロナウイルスの感染「第7波」や旧統一教会の問題で内閣支持率が下落し始めたため、人事を急いだのが実態だ。その証拠に、茂木は翌週に予定していた沖縄出張を急きょ取りやめている。

 岸田は、旧統一教会との関係を認めた前防衛相の岸信夫ら7人の閣僚を交代させた。ただ、人事を前倒ししたことで入閣候補者の「身体検査」をする時間は必然的に限られた。もとより教団との関係性は議員によって濃淡があるのに、政権として問題の有無にどこで線を引くかも曖昧にしたままだった。「それぞれ点検し、結果を明らかにしてもらう。その上で適正な形で見直す」(8月6日の記者会見)という岸田が示した条件は、「過去は不問」と宣言したに等しい。

 新内閣でも7人の閣僚が教団との関係を認めたが、ほぼ一様に「以後は気をつけて、関係を持たないようにしたい」(総務相の寺田稔)と釈明した。岸田の指示通りの対応とはいえ、これでは刷新感が出るはずもなく、改造の狙いはかすむ。

 案の定、内閣支持率に政権浮揚効果は表れなかった。共同通信が改造直後に実施した世論調査で支持率は54.1%。7月の前回調査から3.1ポイント増加したものの、前々回から前回は12ポイント以上下落しており、V字回復とはならなかった。同じ改造直後の読売新聞の調査では、支持率は過去最低の51%に落ち込んだ。その前の調査は5~7日で支持率は57%。わずか数日での変化は、人事が評価されなかったことを如実に物語っている。

 非主流派の閣僚経験者は「おそらく木原(誠二・官房副長官)が人事の前倒しを進言したのだろうが、岸田は焦り過ぎたな」と高みの見物を決め込む。確かに、秋の臨時国会を急いで召集するつもりがないなら、いくら野党が騒ごうとも、教団を巡る報道が沈静化するのを待つ選択肢はあったはずだ。

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