2021-01-09

三井物産・飯島彰己会長「個々の事業経営に、より深く刺さりこんでいく」

飯島彰己・三井物産会長



 ── 三井物産会長の飯島彰己さん、世界中で事業を展開する総合商社の立場から21年の世界経済をどう占いますか。

 飯島 我々が当初予想していたよりも、コロナ禍での経済ダメージは相当大きいものがありました。世界恐慌以来の最大の落ち幅になったわけですが、主要国政府の思い切った経済対策の効果で、経済が縮小した分を半分程度取り戻すことができています。ただ、主要国での再度の感染拡大もあり、回復の足取りはまだ重いと感じています。

 また、世界経済を占う上で一番大きいのは、米中対立です。これは米大統領がバイデン氏になったとしても、根本的な両国のいわゆる覇権争いは変わらないと思います。

 ── しばらく対立は続きそうだということですね。

 飯島 ええ。米中対立は2018年頃から貿易関係での対立はありましたが、当時、アリババ創業者のジャック・マー氏にお会いした際に、彼は「中国は頑張る。大きな需要が国内にあるので、内需を振興させれば耐えうる」と話していました。

 実際に中国自体は内需の成長力を背景に、米中対立の結果としてのデカップリング(分断)にもある程度は耐えられる状況になってきていると思います。

 ですが、世界経済という観点で考えると、単に米中二国間の問題ではなく、世界中の貿易や投資、情報、技術、人の交流が抑制・遮断されることで極めて大きな影響が出てくるでしょう。

 世界経済は自由貿易体制の中でグローバリゼーションと共に発展してきましたが、米中対立がその状況を覆していくことにもなりかねません。

 ── そういう厳しい状況にあって、今後の商社の役割をどのように考えていきますか。

 飯島 デジタル化の進展で、産業間の垣根が無くなってきています。これは、さまざまな領域に事業機会が生まれているということだと思っています。

 昔の商社は仲介商売で売り買いを中心としてビジネスを行ってきましたが、あまりにも変化が激しくて、気が付いたら蚊帳の外にいたなんてことになりかねない。

 そういう危険性があるわけで、今まで以上に商社もオーナーシップを強くして、自ら企業価値を上げていくために、個々の事業の経営に、より深く刺さりこんでいく必要があると思っています。その観点で、マジョリティー投資を増やしていくべきだと考えています。

 また、世界的な課題に取り組むという姿勢も重要だと思います。気候変動を含む環境問題や格差・貧困の問題、そうした大きな課題に対して我々が解決策を見出し、持続可能なビジネスを展開していくことを目指してきたいと思っています。

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