ビジネスモデルの変化に伴い
外部の人材も登用
─ 2つの新しいビジネスモデルづくりには、発想の転換も必要ですね。
橋本 はい。BtoB型のビジネス、すなわち材料会社はどこも同じですが、今までは材料を開発して、作って、お客様の要望に応じて材料を用意するという擦り合わせ型のやり方でお客様に製品を納めてきました。
ところが、世の中の状況が変わっていく中で、お客様に対して同じような提案をしている限りは同じ価値でしか認めてもらえない。
けれども、世の中は成長しているので、量が増えてきて足りなくなり、増産しなければいけなくなる。日本だけ奇跡的にデフレですが、世の中全体はインフレなので、プラントを建設したらコストもかさみ、こちらの出口を変えなければ再投資もできなくなってしまう。
われわれが提供できる付加価値を上げてお客様に認めてもらい、社会に認めてもらい、時間軸でも10年先の社会で認めてもらえるようなものにすることが重要で、そういったモデルをつくっていく必要があります。
それが、先ほど言った自動車のデザインまで提案したり、『タッチフォーカス』(次世代アイウェア)のように最終製品まで製造すること、あるいはお客様の先回りをして、お客様の製品イメージにわれわれの材料の知識などを加えて、もっとふくらませることで付加価値を認めていただき、ビジネスを大きくすることなどです。
これらを総称してソリューション型ビジネスと言っています。
ソリューションという言葉は耳障りがいいけれど、では、どの様に付加価値を高めるのかということが不明確になるので、あまり好きな言葉ではないのですが(笑)。
─ では、サーキュラー型のビジネスモデルとは?
橋本 CO₂削減や環境負荷の低減は待ったなしの問題になっています。われわれも昨年11月に、会社として、カーボンニュートラル宣言をしました。
そうすると、今までのワンウェイで物をつくって、お客さまに納品して終わりというモデルも変わってきます。
当社のお客様のお客様となる消費者が製品を使って、そこから出てくる廃棄物を回収して、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルのような形で原材料に戻していく。これがサーキュラー型ビジネスです。
材料メーカーは、こうしたところまで考えなければいけなくなっています。
─ 化学メーカー1社ではなく、社会全体で取り組まなければ実現しないモデルですね。
橋本 ええ。ただ、素材を扱っているわれわれだからできることでもあります。
われわれが新たなビジネスモデルを創造して、社会全体にドライブをかけていかなければいけないと思っています。
─ そのためには外部の人材も登用している?
橋本 はい。ここ数年は、全体の採用の半分が中途入社でした。
BtoBのビジネスモデルから、顧客起点型のBtoPやCといったビジネスモデルに変えているので、当社の社員だけでは足りない部分がたくさんあります。自分たちがやりたいビジネスストーリーを考えたとき、自分たちの資源だけでは足りない部分があるので、外部の人材に来てもらったり、あるいはM&Aのような形で技術を買ってくることが非常に重要なポイントになっています。
いわゆるDXも今年4月、デジタルトランスフォーメーション推進室を発足させ、日本IBMや日本電産で活躍した人材に来ていただきました。
自分たちのやりたいことが広がる中で、今後もこういう形での人材採用は増えていくと思います。