2021-09-10

米ウェスタンデジタルが『キオクシア』買収? 見え隠れする各国の思惑

米ウェスタンデジタル(WD)が、キオクシアホールディングス(旧東芝メモリHD、早坂伸夫社長)との合併に向けて交渉中だと報道された。米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、合併に伴う買収金額は約200億ドル(2・2兆円)。ただ、キオクシアは「憶測についてはコメントしない」としており、合併の実現度は未知数。それでも、 “産業のコメ”と呼ばれる半導体を巡って、各国・各企業の様々な思惑が見え隠れしているのは事実だ。

 WDとキオクシアは三重・四日市工場で半導体NAND型フラッシュメモリーを共同で開発・製造する協業関係にある。NAND型フラッシュの世界では、首位の韓国サムスン電子が頭一つ抜けており、続いて2位のキオクシアと3位のWDが続く。また、4位の韓国SKハイニックスは米インテルのNAND型事業を買収しており、これが完了すればキオクシアなどを抜いて2位に浮上する見通し。

 「キオクシアとWDはパートナーだが、競争関係にもある微妙な関係」というのが業界関係者の一致した見方。WDは良好な関係にある日本のキオクシアと合併することで、米中覇権争いの焦点の一つとなっている半導体事業で存在感を発揮したい考えと見られる。ただ、仮に合併が成立しても、今後は中国から禁輸措置などの対象となる可能性もあり、すでに協業関係にあるキオクシアにとってはあまりメリットのない話になる。

 一方、この合併話はサムスンやハイニックスを抱える韓国にしても、これから国策として半導体産業を育成しようという中国にしても“うまみ”のある話ではなく、独占禁止法の観点などから両社の合併を認めない可能性も囁かれている。

 東京大学大学院工学系研究科長・工学部長の染谷隆夫氏は「一般論として、日本の半導体はダメになったと言われるが、最終製品にしろ、部材や製造装置にしろ、半導体全般を考えたら、まだまだ国際競争力がある。皆がファイティングポーズをとり続けていれば、日本の半導体は今まで以上に国際競争力を上げていけると思う」と指摘する。

 経済と安全保障が密接に絡む時代にあって半導体をどう位置付けるか。各国・企業の戦略が問われているのは間違いない。

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