2021-09-21

【化学会社が、なぜ電子メガネ?】三井化学の成長戦略

タッチセンサーに触れるとメガネレンズ内の液晶が稼働し、遠近が切り替わる三井化学の次世代アイウェア『タッチフォーカス』



橋本修 三井化学社長


化学にこだわり

社会課題を解決する

 ─ 先を見据えた投資とのことですが、中長期の戦略をどう描いていますか?

 橋本 2016年に2025年を目指した10年間の長期経営計画をつくりました。

 それまでは、1年ごとの予算と3年ないし、4年ごとの中期経営計画をセットで回していましたが、環境変化が激しいなかで、3年、4年の中期経営計画が意味をなさなくなってきました。

 そこで、1年ごとの予算をきっちり回して、2年、3年では方向性を示す。

 その代わり、もう少し長期の視点で見ていくことにしました。

 世の中がこれだけ変化しているので、行きつく先はどういう世の中なのかを想定して、方向性を共有するために長期経営計画を策定しました。

 2016年当時、われわれが言っていたのは「顧客起点型のビジネスモデル」をつくろうということでした。

 これは今も言っていることで、将来の社会課題に対して、われわれが解決策を出すことで世の中に貢献していきましょうということです。

 ただ、掛け声はかけたけれど、具体的に顧客起点型のビジネスをつくろうと言ったとき、現場は何をやらなければいけないのかについては、あまり遡求できていませんでした。

 結果として、5年経った今、われわれが想定していたスピードで、顧客起点型のビジネスモデルができているかというと、必ずしもそうはなっていない。

 経営指標を見ても、われわれが想定しているような、いわゆる成長3領域の利益比率は大きくなりましたが、利益はほぼ横ばいで成長が遅れている。

 その原因は何かというと、実行力がついていなかったという反省がありました。

 ─ 掛け声だけではなく、具体的なものが必要だと。

 橋本 はい。さらに2016年当時はカーボンニュートラルやCO₂の削減、米中貿易摩擦、人権問題が今ほどクローズアップされていませんでしたし、新型コロナウイルス感染拡大により働き方も大きく変わりました。環境そのものが変わってしまいました。

 そこで、外部環境をもう1度見直して、2030年を目指した長期経営計画を発表しました。

 ─ 具体的には、何がどう変わったのでしょうか?

 橋本 われわれが目指す2030年の三井化学の姿としては、化学にこだわって社会課題を解決する。これがコアにあり、われわれの存在意義もここにあります。さらに、サステナブルな社会を実現することで世の中に認めていただく。

 この2点を中心としたコンセプトに作り直しています。

 先程お話しした反省も含めて、具体的には、ソリューション型ビジネスモデルをつくっていくこと。もう1つは、環境対応がますます重要になることをふまえ、サーキュラー型のビジネスモデルをつくることです。

 この2つのモデルを示しながら、具体的な計画に落とし込むための議論を、いま侃々諤々とやっているところです。

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