2021-09-15

【政界】自民党支持層の「菅離れ」加速 衆院選を前に総裁選は波乱含み

イラスト・山田紳



「今回は菅で行く」

 8月16日発売の『週刊ポスト』にセンセーショナルな見出しが躍った。いわく「安倍と麻生の極秘会談で『菅降ろし』の号砲が鳴った! 」。それに触発されたわけではないだろうが、緊急事態宣言の延長方針決定に関する翌日の首相記者会見で、ある新聞社の記者から「総理は秋以降も新型コロナ対策をはじめとする国家運営を担われるお考えか」という質問が出た。

 すると菅は「意図はお見通し」と言わんばかりの笑みを浮かべて答えた。「秋の総裁選に出られるのかという質問が(7月に)テレビ局からあった。その際に、総裁として出馬するのは、時期が来れば当然のことだろう答えている。それに変わりはない」。強がりでも何でもない。菅には確信があったのだ。

 その後のキーパーソンの言動を検証すると、記者会見の時点で流れはできていたことがわかる。

 翌18日、自民党政調会長の下村博文が前首相・安倍晋三の国会内の議員事務所を訪れた。総裁選に立候補する意向を伝えるためだ。しかし、安倍は「決意はわかるけど、じゃあ(私が)下村さんをやるよという状況じゃないのはわかるよね」と下村に翻意を促した。

 下村が所属する細田派の一部には下村を推す声があったが、いずれ派閥を継承する安倍としては、分裂含みの動きを許すわけにはいかない。昨年8月に突然、退陣を表明した後、菅に政権を引き継いでもらった恩義もある。

 昨年の総裁選で菅と争った前政調会長の岸田文雄は「チャンスがあれば挑戦したい。日程が確定すれば具体的な関わり方を決めたい」と言い続けてきた。党内の情勢を見極めようとしたようだ。

 これに対し、岸田とのあつれきから岸田派名誉会長を退いた元幹事長の古賀誠は「利口な岸田会長だから、よく状況を見ながら判断される。出馬まで踏み切るという決断には至らないのではないか」(19日のCS―TBSの番組収録)とけん制。派閥内にも「安倍さんと菅さんが岸田会長につくことはまずない」という冷めた声は少なくなかった。

 それを裏付けるかのように、元官房長官の河村建夫は20日、山口県萩市の集会でこんな裏話を披露した。「麻生さんから直接(話が)あった。『今回は菅で行くべきだ』と明言しておられた。そういう方向で流れていくだろう」。河村は麻生内閣の官房長官で二階派の幹部。当然、麻生の意向は河村を通じて二階に伝わっていたはずだ。

 同じ日、元幹事長の石破茂もBSフジの番組で「『菅さんでは選挙は戦えないので顔を変えますかね』ということが本当に国民に理解されるのか」と述べた。石破派はメンバーの退会や休会が相次ぎ、石破は昨年の総裁選で敗れた後、会長を辞任した。側近の元環境相・鴨下一郎は今期限りで引退する。今回とてもリベンジできる態勢ではない。

 発信力のある行政改革担当相の河野太郎は閣内でワクチン接種政策を担っており、「総裁選うんぬんより、まず今の仕事をしっかりやりたい」と慎重だ。複数の自民党幹部は「河野が出るのは菅が辞めるときだけだ」と口をそろえる。

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