2021-09-15

【政界】自民党支持層の「菅離れ」加速 衆院選を前に総裁選は波乱含み

イラスト・山田紳



戦術ことごとく裏目

 かくして、求心力の衰えた菅の総裁再選が早々と固まるという奇妙な構図が現出した。留意すべきは、それが菅の地元・横浜市長選の結果が出る直前だったことだ。

 自民党横浜市連は多選と健康不安を理由に当時現職の林文子を見限った。しかし、後継探しが難航し、菅内閣の国家公安委員長だった小此木八郎が自ら立候補するという異例の展開に。そればかりか、小此木はカジノを含む統合型リゾート(IR)の横浜への誘致を「取りやめる」と公約し、関係者を驚かせた。

 言うまでもなくIRは菅の肝いりの政策で、地元経済界の期待は大きい。小此木の中止宣言は本来なら造反のはずだが、菅が地元タウン紙で小此木を「全面的かつ全力で支援する」と明言し、混乱に拍車をかけた。IRを推進してきた自民党の横浜市議や経済界の一部は林を担ぎ出して保守分裂選挙に突入した。

 カジノを巡って菅との関係が悪化していた「ハマのドン」こと、前横浜港運協会会長の藤木幸夫は、親交のある小此木ではなく、立憲民主党が推薦した元横浜市立大教授の山中竹春についた。立憲代表代行の江田憲司が口説いたのだ。

 もともと横浜ではIR反対の世論が強い。とはいえ、市長選で有権者から「IRノー」を突きつけられる前に争点から外そうとした小此木や菅の戦術は、いかにも唐突だった。

 加えて、選挙期間中に神奈川県内で新型コロナの1日の新規感染者数が3000人に迫ったことも小此木陣営には誤算だった。有権者の関心はコロナ対策に集中し、横浜市立大でコロナの中和抗体を研究してきた山中は専門性をアピールすることに成功した。

 自民党幹部には連日のように、期日前投票の出口調査など「小此木不利」の情報がもたらされた。衆院選を見越して、自主投票ながら小此木に肩入れした公明党も途中で白旗を上げた。小此木の敗北は避けられない状況になり、二階ら自民党の実力者は8月22日の投開票を待たずに菅支持に動いた。党内の動揺を抑え込もうとしたのだ。

 案の定、横浜市長選は山中が小此木に約18万票の差をつけて圧勝した。翌朝、首相官邸入りした菅は「大変残念な結果だった。市民の皆さんが市政の様々な課題について判断されたわけなので、謙虚に受け止めたい」と記者団に語り、総裁選立候補の意思に変わりはないことを強調した。自民党国対委員長の森山裕も「地方自治における選挙の結果が国政に反映することはない」と菅をかばった。

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