2021-09-15

【政界】自民党支持層の「菅離れ」加速 衆院選を前に総裁選は波乱含み

イラスト・山田紳



党員票は誰に?

 しかし、菅が大きなダメージを負ったのは間違いない。自民党は4月の衆参3選挙で「全敗」し、7月の東京都議選では伸び悩んだ。そして今回の横浜市長選。小此木は菅の選挙区(衆院神奈川2区)でも山中の得票を下回り、菅がもはや「選挙の顔」になり得ないことがはっきりした。

 安倍総裁のもと、12年衆院選で初当選した自民党の「3回生」(約80人)はこれまで逆風の選挙を戦った経験がない。浮足立った若手や中堅議員からは衆院選前に菅の交代を求める声が強まる。ベテラン議員は「菅では戦えないなんて、これまで自分の力で選挙をしてこなかった奴の言うことだ」と顔をしかめるが、近年、風頼みの選挙をしてきたのは、ほからなぬ自民党だ。

 総裁選は9月17日告示―同29日投開票の日程で行われる。岸田は8月26日、「自民党が国民の声を聞き、幅広い選択を示すことができる政党だと示すために立候補する」と名乗りを挙げた。前総務相の高市早苗も立候補に意欲を示している。執行部は菅の再選に自信を持っているが、党員・党友票が岸田ら対立候補に流れ、「菅離れ」が改めて露呈するリスクはつきまとう。国会議員票にしても派閥の締めつけが従来ほどきかない可能性がある。

 立憲民主党代表の枝野幸男は「自民党がどういう人事になろうと、機能していない自公政権が(選挙の)相手なのは何も変わらない」と意気込む。ただ、09年と違って野党の支持率は伸びておらず、共産党との協力を巡る立憲と国民民主党の温度差は相変わらずだ。いきおい「菅のままの方がありがたい」(立憲幹部)という本音が漏れる。

 8月25日、自民党本部で二階らと会談した菅は「総裁選は粛々と進めて欲しい」と指示した。総裁選後、任期満了に伴う衆院選と解散のどちらを選ぶかは流動的だが、投票日は10月下旬以降になりそうだ。

 自民党が8月に実施した衆院選の情勢調査では、約40議席減という結果が出た。ただ、「競っている選挙区が多く、もっと減らす恐れがある」(同党関係者)といい、新型コロナの感染抑止が進まなければ、公明党と合わせて過半数(233議席)ぎりぎりというケースも想定される。菅が総裁に再選されても、衆院選の結果次第では、政権は早晩行き詰まりかねない。

 政治の流動化はコロナ危機で劣化をさらに加速させる。課題はコロナ対応に留まらず、米中との向き合い方など国の基盤を揺さぶる項目ばかり。日本国の舵取り、日本国のあり方を決める上でも政治リーダーの責任が重いことを与野党ともに肝に銘じるべきだろう。 (敬称略)

【政界】解散の大義名分、経済再生も見えず、菅の足元も不穏に

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