2021-04-28

「応用地質」の地盤3次元化技術 防災・減災で日立やトヨタも注目

成田賢・応用地質社長


「待ちの姿勢」から「売る姿勢」へ

 応用地質の地盤3次元化技術は「これまで組んだことがない会社との連携」(同)にもつながっている。例えば、日立製作所。3次元化技術でガス管や水道管などの地下埋設物を判別し、工事で悩みの種だった現地調査の手間や設計の手戻り、配管の損傷事故などを解消できる。

 KDDIとトヨタ自動車との例もある。KDDI(au)のデジタル端末から得られる人の位置情報とトヨタのクルマが取得する車両の走行状態や周辺道路状況に応用地質のデータ、そして気象情報などの公的データを組み合わせ、「災害時に通行可能な道路網を把握したり、避難勧告や通行規制などの周知に役立てることができる」(同)。

 そんな応用地質だが、順風満帆な歴史を歩んできたわけではない。成田氏が社長に就任した09年12月期は初の赤字に転落。高度成長期以降、国による公共事業の予算がつく地質調査は「待っているだけでとれる。受け身の姿勢が当たり前になっていた」と振り返る。民主党政権時には公共事業の予算が激減し、同社もその煽りを受けた。

 そこで成田氏は社内に根付いていた〝待ち受ける〟ことを前提としていた地域ごとの「支社制」を廃止し、市場や事業分野ごとに編成した「事業部制」に移行。基幹システムも刷新した。ただ、技術士の削減や地震に関する技術からの撤退は行わなかった。それが今の技術力につながっている。組織改革から約10年が経過し、「徐々に自社の技術を全国に売る会社に代わってきた」と成田氏は語る。

 今後成長が見込めるのは北米やシンガポール、マレーシアといった海外だ。成田氏は「地震、台風、豪雨、山崩れなど、先進国の中でも最も災害が多い日本であるからこそ技術力が蓄積できる。この地盤の3次元化技術を世界標準化することにも取り組んでいきたい」と話す。

 安全・安心な国土をいかにつくるか──。地中を3次元化する唯一の技術力を持つ応用地質の出番は今後も増えそうだ。

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