2021-04-10

トヨタがいすゞと再び資本提携 トラックの積載効率は50%以下

3社での提携を発表する3社長(左から、日野自動車社長の下義生氏、トヨタ自動車社長の豊田章男氏、いすゞ自動車社長の片山正則氏)

トラック1台当たりの積載効率は50%以下──。「荷物を届けてから戻ってくるときは荷室がカラというケースはよくあること」と物流会社関係者は語る。

 かねてより電動化とドライバー不足が深刻化していた商用車業界にあって新たな提携劇だ。「自動車業界全体でカーボンニュートラル(脱炭素)に取り組むとき、商用車の世界にも誰かが入り込まない限り解決に向かわない」──。トヨタ自動車社長の豊田章男氏は商用車業界での自社の役割をこう強調する。

 トヨタといすゞ自動車が再び資本提携する。トヨタは428億円をいすゞに出資し、出資比率は約5%になる。両社は2018年に資本提携を解消していたが、このときの協業のメインは小型ディーゼルエンジンの共同開発。ディーゼル車の需要が減少したことが背景にあった。しかし今回のテーマは脱炭素をはじめとした次世代技術「CASE」への対応。今回の提携にはトヨタの商用子会社・日野自動車も加わり、3社による新会社を設立。これまで顧客の運送会社の走行記録などのデータはメーカーが異なれば互換性がなく、使い勝手が悪かった。新会社は3社のデータを共有・分析することで最適な配送ルートや人員の配置などに役立てる。

 商用車業界では積載効率以外にも配送時に待ち時間が多く、作業効率が悪くなるといった「負のスパイラル」(豊田氏)が起こっており、対策が求められていた。また、電気自動車を作ろうとしても走行距離が長くなればなるほど電池の積載量が多くなり、荷室スペースが犠牲になるというジレンマもある。

 特にいすゞと日野は国内の2大トラックメーカーとして火花を散らしていたが、2社で課題認識を共有しながらも「日野といすゞの2社だけでは足を踏み出せないところ」(日野自社長の下義生氏)があった。

 そこで両社の“触媒役”となったのがトヨタだった。自社も含めて「CASEへの対応は1社では何もできない」という危機感があったからだ。

 実際、商用車業界は「乗用車メーカーに比べて電動化技術が遅れているのが現状」(いすゞ社長の片山正則氏)。CO₂(二酸化炭素)排出量で国内全体の約半分を占め、年間の走行距離もクルマ全体の約4割を占める商用車業界。3社の提携で、物流全体の課題解決への貢献が期待されることになる。

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