2023-02-14

【製品値上げ・賃上げをどう実現?】東レ社長・日覺昭廣の極限追求戦略 「人を大事にする経営に徹してこそ」

日覺昭廣・東レ社長




「原料高・製品安」状況をどう変革していくか?

 東レの2023年3月期は今のところ、増収増益の見通しだが、この原料価格高騰に見合う製品価格の見直しはこれからも引き続き課題として残る。

「増収は一応、中期計画目標どおり、ほぼ行けるのではないかと思っています。多少はフォローの感があるんですけどね。フォローというのは、いわゆる円安になって、海外の売上高などが為替換算でプラス方向に現れると。それから原材料が上がって、多少は製品価格が上がっているということですね。それで一応増収になっていると。ところが、利益のほうは厳しい。それこそ原料は上がってね。普通、原料が上がっても、即価格は上げられないからタイムラグがあって、まだ価格転嫁という意味では、完全に吸収できていない」

 欧米等は比較的スムーズに新価格体系に移行しているのに、なぜか、日本はそうならない。

「逆にこれは本気で日本は考える必要があると。というのは、今、例えば、従業員の給料は韓国より安い。今、特に円安で、1人当たりのGDP(国内総生産)も台湾に抜かれてしまったと。それはやっぱり僕は本当に危機的な状況だと思う。このまま行くと、結局、海外から日本に仕事に来る人も儲からないと」

 今の日本はまさに危機的状況と日覺氏は文字どおり、危機感を露わにする。

「やはり円安というのは国力の低下を表しているということ。日本はここで方向転換をしていくべきです。給料なども上げて、それから物価も高くして、もう全体のレベルを上げていかないと。方向転換をここで真剣に考えないといけないと思います」

 製品価格も競争力の1つで、日本人は歴史的に安い製品価格で国際競争をくぐり抜けようとしてきた。

「産業が発展しない時代のことならともかく、今はそこそこ皆のレベルが上がってきている。単にモノづくりだけに日本がこだわっていると、製品価格が上がらず、結局、自分の脚を引っ張って、給料が上がらないと。いわゆるモノの値段なんかみるに、海外と日本を比べたら、全然もう海外のほうが高い。そういう状況なので、少なくとも海外に負けないような、そういうレベルに持っていく必要があるんじゃないかと。だから、日本もモノの値段を上げて、給料も上げていくことが大事」

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