2023-02-14

【製品値上げ・賃上げをどう実現?】東レ社長・日覺昭廣の極限追求戦略 「人を大事にする経営に徹してこそ」

日覺昭廣・東レ社長




3人に1人は研究開発関連体制

 東レは、研究機能が集積する滋賀県に先端材料研究所やフィルム研究所、電子情報材料研究所などの研究施設を構える。

 同社は、社員の3人に1人は研究開発技術者といわれてきた。東レ本体だけでみると、2.5人に1人の割合。

 それだけ、新境地を拓く最先端技術の研究開発に熱心な風土だということ。

「要は、生産現場自身がほとんど無人化しているし、やはり研究開発がメインになる」

 日覺氏はモノづくりの現場の変化を次のように語る。

「三島工場(静岡県三島市)で見ても、ひと昔前は生産現場に3000人、4000人いたじゃないですか。今は100人もいない。だから、工場自身はもう完全に無人化の歴史なんです」

 日覺氏が入社したのは1973年(昭和48年)。その秋には石油ショックが起きた年である。戦後の日本の経済成長を支えた〝安い石油価格〟という構造は中東産油国の台頭でガラリと変わりつつあった。

「わたしが入社する2年前の昭和46年(1971)頃、東レは石川工場を造った。その時に無人工場を造ったんです。当時の新聞などを読むと、非常にこんな時期に無人工場を造るなんて、よく分からないと。あれは機械屋社長の道楽だと言って書かれていましたよね。だけど、その工場は今も動いていますからね」

 建設後50年余経った石川工場(石川県)は石油ショックをはじめ、幾たびかの環境激変を生き抜いてきたということ。

「もちろんメンテナンスをして、きちっとやっていればですね」

 時代の変革期、転換期をどう生き抜くかはいつの時も変わらないテーマ。人が工場の機械を動かすと固定的にモノを考えている人は無人化工場の出現に戸惑い、批判ぎみに反応した。しかし、50年後、先述の三島工場にしても、最低限必要な陣容100人で工場全体を動かせるように変化対応してきている。

 機械やロボット、引いてはAI(人工知能)で代替できるものはそうしていき、人はもっと付加価値の高いものの追求に向かう。そうすることで、東レで言うならば、社会や人類に貢献する素材や資材の開発に全力投球していくということ。

 そうした蓄積があってこそ、冒頭の極限追求の経営につながるということである。

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