2023-01-23

【なぜ今リカレント教育なのか?】第一生命ホールディングス会長・渡邉光一郎の「産・学・官連携で人材づくりを」

渡邉光一郎・第一生命ホールディングス会長 (経団連副会長)

「人への投資」が日本の再生を左右する─。「産業構造や教育の方向が変わろうとするときは、学びの見直しが必要で、人の学びも変わらなければならない」と中教審(中央教育審議会)会長を務める渡邉光一郎氏(第一生命ホールディングス会長)。リカレント教育、つまり社会全体での学び直しの必要性が言われ、時代の変化への対応力を高めるリスキリングが説かれる背景には、“縮小日本”という現実がある。1人当たりのGDP(国内総生産)は世界で27位、一人当たり労働生産性で見れば、OECD(経済協力開発機構、38カ国加盟)の中で28位、主要先進国7カ国の中で最下位という状況が続く。国力を担うのは「人」。その「人」が大きく羽ばたき、飛躍していくにはどうすればいいのかという問題意識。「非正規労働」関係者の学び直しを含め、社会全体の学び直しをどう進めていくか。こうした社会課題解決へ向け、「人」の可能性をどう掘り起こしていくか?

【あわせて読みたい】第一生命HD・渡辺光一郎会長「産業構造が大きく変わる今、リスキリング、リカレントなど産学で教育の見直しが必要」

なぜ、今、リカレント教育なのか?


 リカレント(recurrent)─。〝回帰する〟、〝循環する〟という意味のリカー(recur)の形容詞。リカレント教育という場合には、社会全体での学び直しを意味する。

 1990年代半ばから、急速にインターネット革命が進み、経済領域はもちろん、行政、医療、そして社会制度全体にデジタル化による変革が進む。そうした社会変革の中で、リカレント教育が浮上。

 それにしても、なぜ、今、リカレント教育なのか?

「社会改革をDX(デジタルトランスフォーメーション)だけでやろうという話ではなくて、人を中心にして、創造性をもって社会をつくっていこうと。教育改革には、そういう大前提がある」と経団連(日本経済団体連合会)副会長で教育・大学改革推進委員会委員長を務める渡邉光一郎氏(第一生命ホールディングス会長)は語る。

 事実、社会は大きく変わろうとしている。

「ええ、サステナブル資本主義や公益資本主義が叫ばれるようになり、そういう時代変化の節目の中で、産業構造が変わるのも、それに併せて教育のほうの構造も変えようと、そういう流れでずっときている」

 国連が定めたSDGs(サステナブルな社会、持続性のある社会をつくるための合計17の目標)。そのSDGsを加味して、日本はソサエティ5.0(society5.0)という未来社会のコンセプトを提唱。

 人間社会の歴史を遡れば、ソサエティ1.0は狩猟の時代。2.0(農業)、3.0(工業)、4.0(情報)の時代を経て、ソサエティ5.0の時代は、IoT(全てのモノがインターネットにつながる)やAI(人工知能)が社会基盤を支えるという捉え方。

 欧州発の第4次産業革命という捉え方もロボット工学、AI、IoT、ブロックチェーン、ナノテクノロジー、自動運転車など最先端テクノロジーを活用しての新しい社会づくりを目指すもの。第1次産業革命(蒸気=石炭)、第2次(内燃機関=石油)、第3次(情報=コンピュータ)に続く第4次産業革命である。

 ソサエティ5.0と第4次産業革命はほぼ同じ社会像、社会のあり方を示すものと言っていい。

 そうした社会変革が進む中で、新しい生き方・働き方の追求も進む。

「経団連のバッジには、真ん中にソサエティ5.0が入っており、これはSDGsを示しています。社会課題をイノベーションで変えていく。しかも、それは人間を中心にして、人の創造性をもってイノベーションで変えていこうと。ですから、科学的に合理的に社会課題を解決する。それの行く先はSDGs解決だし、その先はさらにウェルビーイングになる。こういうことだと思います」

 ウェルビーイング(well-being、健康・幸福)。つまり、いい生き方・働き方の追求である。

 こうした社会変革で人の意識も変わるし、また変えていかなければならないという認識。そこで産業構造の変革と教育のあり方が結び付いてくる。

「産業構造とか教育の方向が変わろうとするときは、学びの見直しがどうしても必要。産業構造が変われば、人の意識もかわらなければいけないし、人の学びも変わらなければいけない。ここでリカレントやリスキリングという考え方が出てきたのは、そういう意味では歴史の必然だと思うんです」

 産業を教育の関係はどうあるべきか?

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