2021-01-07

大和証券グループ本社・日比野隆司会長「『貯蓄から資産形成へ』は静かに始まっている」

日比野隆司・大和証券グループ本社会長

── 大和証券グループ本社会長の日比野隆司さん、21年の世界経済は?

 日比野 米大統領選の結果を受け、世界経済の分断は危機的状況から徐々に脱することが期待されます。米中覇権争いの構造化は免れませんが、経済の不確実性は低下し、環境は好転するのではないかと見ています。

 コロナ禍は引き続き不確定要因として残りますが、ワクチン開発の進展もあり、そのマグニチュードは徐々に縮小していくのではないでしょうか。

 ── 日本経済の先行きは?

 日比野 日本の実質GDPがコロナ前の水準に回復するのは2~3年後というのが一般的な見方ですが、個人的にはもっと早い回復が可能で、それにチャレンジすべきだと思います。

 コロナ禍で、デジタル化の著しい遅れを始め、日本の生産性向上を妨げてきた多くの課題が白日の下に晒されました。しかし、デジタル化や規制対応の遅れは、逆に言えば日本経済の「伸び代」の大きさを示しています。

 コロナ危機を奇貨として、日本企業がデジタル革新やイノベーションに取り組み、政府が規制でそれを強力に後押しすれば、日本の生産性向上が大きく前進し、飛躍的な経済成長につながっていく可能性が出てきます。

 ── 「貯蓄から資産形成へ」は長年の課題です。株価の見通しも含めた考え方は?

 日比野 株式市場はバブル崩壊のイメージ、トラウマからようやく脱却しつつあります。29年ぶりの高値(20年11月時点)をつけ、新しい世代がコロナ禍の中で多く株式市場に参入しています。

 その意味で、「貯蓄から資産形成へ」へのシフトは、すでに静かに始まっているのではないでしょうか。

 株価については日経平均で3万円が視野に入る水準までの上昇を見込んでいます。日米欧の中央銀行は緩和の姿勢を継続しており、世界的な超低金利環境が定着しています。

 この環境下では比較的高いバリュエーションが正当化されるため、日経平均の想定PER(株価収益率)は16倍程度で考えています。

 ── 銀行と証券の垣根、「ファイアーウォール規制」の存廃の議論をどう考えますか。

 日比野 テレビドラマ『半沢直樹』の影響で、「銀証バトル」的に取り上げられがちですが、健全な資本市場を通じ、日本経済・日本企業の発展に資することは銀・証共通のゴールです。

 ただ、日本では銀行、とりわけ3メガは事業会社に対する大きな影響力を保持する特殊な状況にあり、欧米規制との単純比較は意味がないと思います。業界の利害を離れ、資本市場の健全性、顧客である事業会社や個人の視点からの、レベルの高い議論が進むことを期待します。

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