2020-12-16

JTB社長・山北 栄二郎「旅から新しい事業が生まれる」

「108年の会社の歴史の中で経験したことがない状態」と語るのはJTB新社長の山北栄二郎氏。新型コロナの影響で旅行需要が蒸発し、当面は需要回復が見込めないという中での登板となった。コロナ前からデジタル化の波が押し寄せ、「第三の創業」を掲げて事業変革を進めていた同社。「交流」をキーワードに新しい生活様式の下での新たな旅行の姿を模索する。

※インタビューは10月2日に実施

「新しい旅の在り方」を追求

 ─ コロナ禍という旅行業界にとって逆風下にある中、今年6月の社長就任となりましたが、抱負を聞かせてください。

 山北 JTBは今年で会社創立108年目を迎えたのですが、これまでの歴史の中で先輩たちが誰も経験したことがないような状態に突然陥りました。前例もなく、世界中が直面した危機に対して、どうやって進んでいくかという中でスタートすることになりました。

 私が社長に就任したのは6月末で、新型コロナウイルスの感染が少し収まり、旅行需要が戻り始めるのではないかという期待もあるときでした。その前後から、このピンチを未来に向けてのチャンスにするため、これまでの旅行業界の慣習を見直し、「新しい旅の在り方」をつくっていくため、模索してきました。

 ─ 「新しい旅の在り方」として、デジタル化も含めてどんな姿を見通していますか。

 山北 もともと我々は旅行という「旅の文化」を広げてきたのですが、旅行予約がオンライン化されるにつれ、予約の利便性といった表面的な部分だけが取り沙汰されるようになり、どうも旅行を文化として捉えることから少し遠ざかってしまっているのではないかと思っています。

 もちろん、デジタル化には対応していかなければなりません。しかし、それと同時に大切なのは、旅先でどのような過ごし方を提供するかということで、旅の原点に立ち返るため、もう一度、CX(Customer Experience、顧客体験)の定義を見直そうと思っています。

 そもそも当社の前身である「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」は1912年に外国からお越しになるお客様をサポートする目的で設立されました。外国人の方々に日本をご紹介し、日本を知っていただき、そして外貨を獲得する。つまり、日本でどのように過ごしていただくかをサポートしてきました。

 その後、高度成長期後に日本人の海外旅行が急速な伸びを続け、今度は日本人が海外でどのように過ごすかということをサポートするようになりました。当然、国内旅行でも同じです。

 そして今、この旅の体験を「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」、そして「日常」という人間のライフサイクルの中で捉え、再度定義し直そうとしています。

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