「日本が国際コンクリート連合(fib)の前身、FIPに参加して60余年、やっと日本人が認められて会長職に就くことができるのは名誉なこと。運営は大変だがやりがいがある」
fibは世界42カ国、1000以上の団体が加盟する、コンクリートに関する世界的非営利団体。日本からは日本コンクリート工学会とプレストレストコンクリート(PC)工学会が加盟している。欧米豪以外の国からの会長選出は初めてのこと。
コンクリートの起源はローマ時代に遡る。さらに200年前、その強度を高める技術を開発したのが英国人で歴史的に欧州が強い分野。日本は高度経済成長時代、鉄筋の代わりに高張力鋼を使って強度を高めたPCの技術を取り入れたことで新幹線や高速道路など、現在も大動脈を支えるインフラを構築できた。
日本では菅義偉首相が2050年に温室効果ガスを実質ゼロにする目標を掲げたが、コンクリートは製造、構造物の建設時にCO2を排出する。「世界最優秀の人材のベクトルを一つにし、低炭素技術を発信していく」
三井住友建設も鋼繊維を混入した超高強度コンクリート「サスティンクリート」を開発。材料の4割が鉄鋼スラグなどの産業副産物で、製造時のCO2排出量を従来比7割削減できる。「カーボンニュートラルでなければ仕事が受注できないという世界が、すぐそこまで来ている」
春日氏はPCに関して日本で主導的立場だった旧住友建設の出身。入社の動機も、友人の父親からPCの解説を聞いたこと。
約30年前の若手技術者時代からfibに参加。世界初の工法を採用した「小田原ブルーウェイブリッジ」などの橋梁の設計施工に携わり、世界の技術発展に貢献してきたことも、現在の立場につながった。春日氏が取得した特許は約80に上り、三井住友建設はfib選出の最優秀賞も2度受賞している。
かつては欧州勢に学んできた日本だが、2000年代以降は技術で肩を並べた。「若手技術者も技術で世界に認められる仕事ができる、やりがいのある時代」と次世代の活躍に期待する。