2021-09-03

なぜ「松本モデル」はうまく機能しているのか?【日本病院会:相澤孝夫会長】

相澤孝夫・日本病院会会長(相澤病院最高経営責任者)



感染経路の遮断よりも感染源の隔離が重要

 ─ 重症化したら大学病院に患者さんを送るといったことも含めてですね。

 相澤 そうです。重症度というのは、入院が必要な中等症の人と重症の人それともう1つは軽症な人になります。軽症な人には宿泊施設に行ってもらうという対応や症状のない人には自宅か宿泊施設で待機してもらうという対応があります。松本モデルでは、こういったことに対しても事前に準備していたために、患者さんを全部吸収することができたのです。

 ただし、混乱なくできたのは、人口10万人当たり、どれくらいの感染症患者さんがいたかを調べると、全国平均の約半分くらいになっていたからです。最もひどかったのは1月中旬くらいでしょうか。瞬間風速的に患者さんが増えたことがありましたが、1週間の平均で見れば、大体全国平均の半分くらいのところで留まっています。

 ─ 感染者数が全国平均の半分で抑えられていることを見ても、松本モデルが効果を発揮していると言えそうですね。

 相澤 ええ。松本地域では7月上旬の数日間、感染者数がゼロという期間もありましたからね。ここで思うのは、やはり感染拡大を抑え込むためには、皆さんの協力は欠かせないということです。

 私も地元のテレビ局にコメントを求められたのですが、そこで申し上げたことは「まずは感染症患者さんを増えないように抑えて下さい」ということでした。感染者を抑えれば医療崩壊は起こりません。


「松本モデル」の中で中核的な役割を果たしている「相澤病院」

 しかしながら、そういったお願いを聞かずに外で飲み歩いてウイルスをどんどん広げてしまった結果、医療崩壊が起こってしまう。医療関係者として思うのは、感染症患者が爆発的に増えないようなコントロールをしなければ皆が困ってしまうということです。

 医療現場も少しずつ感染者が増えていく分には対応可能ですが、第4波のときのように、急激かつ爆発的な拡大が起こると、それについていけず、医療崩壊につながってしまうのです。

 こういったことを鑑みると、おそらく感染者がそんなに増えていないうちは、保健所によるクラスター対策で対応できると思います。ある所で感染者が見つかると、その回りを重点的に検査するわけです。感染者が出現した周辺を徹底的に調べて、感染が疑われる人を全員隔離すると。それで感染源を減らせます。

 ところが、1人の人が5人に感染させた場合には、その5人を早めに隔離しなければなりません。感染した5人が次の5人にうつしてしまう可能性があるからです。

 今は移動を制限する、飲み食いを制限するといった感染経路を遮断しようとしているわけですが、それだけでは不十分でしょうね。感染の元になる人を狙い打ちして、できるだけ早く隔離すると。

 そして、感染が疑われるエリアの人々に対して徹底的にPCR検査を含めた検査を行い、感染の疑いがある人をどんどん隔離していく。おそらくそういう人は症状も深刻ではありませんから、入院しなくても済みます。そうすると、医療崩壊からは守られると思います。

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