2021-09-03

なぜ「松本モデル」はうまく機能しているのか?【日本病院会:相澤孝夫会長】

相澤孝夫・日本病院会会長(相澤病院最高経営責任者)



なぜ「松本モデル」が危機時に機能したのか?

 ─ 感染症患者を受け入れるための対応が各病院でできていなかったと。

 相澤 もともと一般病床を感染症用病床に転用する計画はなかったので仕方のない面もあったと思います。しかも、次に起こったのが病原体によって汚染されている汚染区域や汚染されていない清潔区域などに区分けするゾーニングといった感染症対策です。

 各病棟ごと、あるいは病棟内でゾーンを分けなければなりませんし、場合によっては、病室内を陰圧にする陰圧装置が必要になります。

 感染症病床を準備するといっても、そのための様々な対応措置をしなければならず、すぐに感染症病床を準備できるというわけにもいかず、そういう対策が可能な病院しかできなかったと。そもそも準備がなかったのですからね。それで突然、感染症病床を準備してくれと言われても困るのは当然です。

 ─ そこでベッドが足りないという課題が出てきました。

 相澤 はい。すると今度は大阪府では知事の権限で半ば強制的にベッドを準備するよう要請が出ました。東京都でも都立病院の1つを感染症病院に指定するといった事例も出てきました。

 ただ、それができるのは都道府県知事自身がトップで指示命令が可能な都道府県立病院だけでした。これらの病院は知事によるトップダウンで実行できたわけです。

 他にも、都道府県知事の権限が大きく影響する赤十字病院もそうだと思います。赤十字病院の中でも大きな病院に関しては、本部が管轄している病院もあると思いますが、都道府県知事の権限が影響する病院もありますからね。

 あるいは、市町村立の病院もそうです。地方自治法では市町村立病院は各都道府県の権限が及びますので、市町村立病院には都道府県知事の命令が及びやすかったと思います。

 ところが、こういった病院以外の病院には、半ば強制的な命令ができないという現実がありましたので、なかなか準備が進まなかった。

 よく我々の「相澤病院」が含まれる「松本モデル」が、どうしてうまく機能しているのかと聞かれることがあるのですが、我々は今回のような感染症が拡大する前から、関係機関が集まり、皆で話し合って「ここの地域は、救急医療や災害医療などについて、こういう医療体制にしていこう」とあらかじめ話し合って決めていました。

 要するに、準備をしておいたわけです。そして、今回のコロナの感染が広がってきたときも、「それでは話し合いで決めていた通り、この病院は感染症病床を10床から30床にしましょう」といった具合に、感染症病床を広げることによって感染症拡大に応じて患者さんを吸収することができました。

河北医療財団・河北博文理事長「『その人らしくいかに生きるか』という時代に『スマートホスピタル』を創りたい」

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