2021-08-16

【キッコーマン】中野祥三郎新社長が語る「調味料は一度その地に定着すれば簡単にはなくならない」



米国の販売子会社での経験

 ─ 1980年代には米国の販売子会社に勤務しますね。

 中野 30歳前後でしたが、責任のある仕事をやらせてもらいました。海外ですから様々な人がいます。特に海外の人は思ったことをズバズバと言いますので、「私の給料は何でこんなに上がらないのか」と直接言われたりもしました。そういった主張にはしっかりと説明し、対応しましたね。

 ─ いい経験になったと。

 中野 そうですね。多様な人間を事業拡大という目標に向けて一緒にやっていこうよと。このビジョンの共有に努めました。異文化の人たちをどのようにまとめ皆で前向きに取り組むかという点で勉強になりました。

 ─ 日本では低価格が当たり前となり、企業の利益は出ず、消耗戦を強いられているという悪循環に陥っています。

 中野 同じ商品をずっと売っていると、どうしても価格は下がってきます。昔から定番の濃口しょうゆなどはスーパーのチラシの特売などで安く売られていました。その結果、どんどん価格が下がってきました。その中で当社は「特選丸大豆しょうゆ」という大豆を丸ごと使った商品で低価格競争から一線を画すことに成功しました。

 そして、10年ほど前に密封型の容器を使った「いつでも新鮮」シリーズを開発しました。生しょうゆでも空気に触れない容器を使うことで、しょうゆが劣化せずに済むというものです。密封容器を使うことで、“生”のしょうゆを打ち出せたのです。

 ─ 同シリーズは値引き競争に巻き込まれていませんね。

 中野 はい。密封容器ができたことで、減塩しょうゆのおいしさも維持できるようになりました。しょうゆの容器がペットボトルだった頃、家庭用の減塩しょうゆの構成比は、しょうゆ全体の1割もありませんでしたが、「いつでも新鮮」シリーズの発売後、このシリーズ内における減塩しょうゆの割合は約3分の1となっています。

 ─ 国内は人口減少が続きます。どう対応しますか。

 中野 基本は商品の付加価値を上げて、お客様により喜んでいただけるような商品を開発することです。したがって、付加価値の高い商品にシフトしていくことが基本です。「簡便」や「健康」といった付加価値の高い商品を提供すると共に、おいしい料理のレシピを提案していくことで、食生活を楽しんでいただきたいと考えています。

みそに次ぐ新たな事業とは?【ハナマルキ・花岡俊夫社長】

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