AIが浸透する中、人が仕事を得る方策
─ コロナ禍もあり、働き方が変わりました。特に若者の意識の変化は大きいのではないかと思いますが。
熊谷 かなり変わってきていますね。特に現代は「エンプロイアビリティ」(employability=雇用され得る能力)が問われており、自らスキルを身に付けるためにリスキリングを含め、学び続けて、常に仕事を獲得する能力を高めなくはなりません。
─ ただ、徐々に高まっているものの、日本では雇用の流動性はまだ低いですね。
熊谷 かなり変わってはきましたが、まだ道半ばですね。今後はAI(人工知能)がさらに浸透してきますから、その中で多くの仕事がAIに代替されていくことになります。
よく言われることですが、医師は代替されるが看護師という人間との触れ合いの仕事はなくならないというように、リアルで触れ合う人間関係の部分は、従来以上に大事になります。
─ AIにはできないことが人間にはできると。
熊谷 人間とAIはどこが違うかというと、一つは体験だと思うんです。実際に身体を使っていろいろなことを体験する。まさに哲学者の西田幾多郎が言った「純粋経験」のような話ですが、リアルな対人関係や、ある種の価値判断、哲学、倫理観が問われるようになります。
例えばAIが裁判官になれるかというと、被告人に死刑を宣告するか否かといった、価値判断に関わる仕事ですから人間でなくてはできませんし、交渉ごとも人間同士でなくてはできません。その意味で、AIが発達したとしても、対人関係能力や、体験に裏付けられた価値判断や創造性など、人間に残される部分は沢山あります。
こうした点を意識しながら学んでいくことが、AIが発達する中で人間がエンプロイアビリティを維持することにつながってくるのだと思います。