2023-11-06

【財務省】財政健全化議論はどこへ? 解散総選挙睨み「減税」検討

岸田文雄政権が近く取りまとめる経済対策は、個人向けの減税の在り方が最大の焦点になりそうだ。

 少子化対策や防衛費増額の方針を打ち出した首相に対し、「増税めがね」などと批判が強まっていることや、年内の衆院解散・総選挙をにらみ、有権者へのアピール材料として減税が浮上した形だが、各報道機関の内閣支持率は過去最低を更新し、批判の払拭には程遠い状況だ。財政健全化に至っては「放置されている」(財務省幹部)に等しい。

 10月10日の閣議後会見で、鈴木俊一財務相は、物価高対応の一つであるガソリンなどの燃料補助金など、国債頼みの支出先行が常態化している現状を問われると、「そのことについては私も大変頭を悩ませている」と述べた。

 岸田首相は、所得税減税も含めた「増収分の国民への還元」に向けた具体策について、20日、自民、公明両党の政調会長に検討を指示すると共に、与党税制調査会での年末にかけた議論を見守る姿勢を示しているが、自民党からは「首相が決断すべきなのに責任を党側に丸投げする気か」(閣僚経験者)などと反発がくすぶる。

 官邸の「減税」方針が定まらないのは、財務省が2日に公表した8月の一般会計税収が前年同月比で2割減になり、2023年度の税収は22年度を下回る可能性が出てきたことも背景にある。中国経済の減速など世界経済の下振れリスクもあり、財務省内では「減税している場合ではないのでは」(主計局)との声が出ている。

 所得税を巡っては、防衛費増額の財源確保策として増税対象になっている一方で、物価高対応として減税の対象にも浮上したため「ちぐはぐな印象」(与党幹部)は否めない。

 財政当局のかじ取りを担う鈴木氏だが、物価高対策と財政規律の両立に向けて具体的な動きを見せるべきだ。

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