2023-10-20

【国土交通省】赤字路線の存廃をめぐり国主導で協議へ

利用者減少で深刻な赤字経営に陥るローカル鉄道再編を促す改正地域公共交通活性化再生法が10月1日、施行された。

 柱となるのは国が「行司役」として自治体と鉄道会社の存廃協議を仲介する「再構築協議会」制度の創設だ。これを受けて3日にはJR西日本が早速、広島、岡山両県を走る芸備線の一部区間について協議会設置を国に要請しており、国主導で再編が進むか注目される。

「一つでも多くのローカル鉄道で再構築が進むことを期待している」。斉藤鉄夫国土交通相は3日の記者会見で、再編促進への決意を示した。

 国交省は今年を地域交通の「再構築元年」と位置付け、制度・予算両面で再編支援の枠組みを整えてきた。再構築協議会はその一環だ。不採算で事業継続が困難となった路線について、維持策か廃線によるバスなどへの転換かを鉄道会社と自治体に協議させ、3年以内を目安に再構築方針を策定。これに基づき、新たに拡充した交付金などで支援する。

 都市部の収益でローカル線の赤字を内部補填する構図の限界がコロナ禍を経て明確になる中、JR各社は昨年来、各地で沿線自治体との存廃協議入りを探ってきた。ただ、自治体側には「廃止ありき」の議論への警戒感が根強く、思うように進んでいないのが実態だ。

 再構築協議会は、こうした自治体にも「自分ごと」として解決に責任を持たせる仕組み。鉄道会社か自治体が設置を国交省に要請し、国交省は必要と認めれば、協議開始を通知する。

 災害など正当な理由がない限り協議には応じなければならず、鉄道会社は「自治体を強制的に協議の場に引っ張り出せる」(関係者)という手段を得たことになる。広島、岡山両県などが存廃協議を拒み、JR西との溝が深まる芸備線の協議会設置要請は、まさにこれを生かしたケースだ。

 JR西を含めJR各社ともに、地元との対立は避けたいのが本音。まずは任意で穏便に存廃協議を始めることを優先し、闇雲にこのオプションを手段として行使するつもりはなさそうだが、「拒んでも同じ」という自治体への圧力が高まるのは必至だ。

 国が芸備線の協議会で成功例を示し、「どうせなら早く手を打った方が良い」という前向きな機運を醸成できるかも焦点となる。

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