2023-11-01

大和ハウス工業・芳井敬一の「『何が世の中の役に立つか』の創業精神で」

芳井敬一・大和ハウス工業社長

「社会的に困っている課題に対して、やってみようという力。その力が今、試されている」と大和ハウス工業社長の芳井敬一氏。創業は1955年(昭和30年)、わが国で初めてプレハブ住宅を開発。戦後復興期から高度成長期に向かう人々の「マイホームを持ちたい」という夢に応えてきた歴史。創業者・石橋信夫の経営理念は、「社会に求められるものをつくる」。創業から70年近くが経つ今は、『住宅、商業施設、物流施設』を3本柱に、「社会的課題の解決を図る経営に徹していこう」と芳井氏はグループ会社全体に呼びかける。人口減、少子化・高齢化が進む中、街や団地の再生プロジェクトに取り組む。「つくった責任をしっかり果たし、新しい人たちが住みたいという街に変えていく」と芳井氏。コロナ禍も、コロナ禍1年目を除いて、増収増益を達成したのも、商業、物流の両事業が好調だったからだ。「さまざまな事業をバランス良くポートフォリオに組み込んでいく」という芳井氏。創業100周年の2055年度に売上10兆円を目指す道のりをどう描くか─。


異常気象の中で建設現場は今……

 環境激変、ことに異常気象や大水害に今夏は世界中が悩まされた。

 9月に入って、〝炎熱地獄〟は緩和されてきたが、暑さ対策をどうするかは、全地球的課題だ。

「ええ、わたしたちの仕事でも暑さ対策は大変です。特に内装関係の人たちは深刻で、危険領域に入る時だってあるわけです。現に倒れてしまう人もいます。それで、みんな実態を見てきていますから、ちょっと気分が悪いと言ったら、横になったりして、自主的にやってくれています。とにかく、朝、顔色がいいからと思っても、熱中症は急に体調が変化すると言いますからね、怖いです」と大和ハウス工業社長・芳井敬一氏(1958年=昭和33年11月生まれ)。

 その芳井氏は、「夏場を何とか乗り切ったとしても、秋口以降、身体の変化が起こらないかと、すごく心配しています」と緊張感を崩さない。

 異常気象・気候変動で水産資源にも変動が見られる。

「本当にそうですね。伊勢エビが北のほうで獲れたり、沖縄近海にいるはずの魚が本州で揚がったり、甲州のワインがどんどん上に上がっていったりとかね」

 地球温暖化は18世紀以降の産業革命以来、人類が化石燃料をはじめ、経済活動でエネルギーを消費した結果、生み出されたものという見方がある。だから、環境問題を意識した企業活動、つまりGX(グリーン・トランスフォーメーション)が大事になってくるということ。

 一方、人類の産業活動とは関係なく、地球が長い時間の中で寒冷期、温暖期と繰り返してきた周期の1つという見方もある。コトの真偽はともかく、自分たちが今できる事は何か─という見地に立った時、「GXを進めていく」ということである。

「とにかく、いろいろな方がいろいろな軸で言います。例えば、CO2削減はもってのほかという意見もある。どれが答えか分からないけれども、少なくとも国が決めたこと、僕たちが選挙で政党とか、個人を応援して、そこで決まった事ですよね。その決まった事をやるという事が大事だと思うんですね」

 大和ハウス工業は、環境エネルギー事業も展開(全売上高の3%を占める)。北九州市の響灘火力発電所の経営に10年以上前から参加しているが、このほど完全子会社化して経営権を取得。

「バイオマス発電に力を入れていきたい」という芳井氏。

 もともと石炭火力でスタートした響灘火力発電所だが、当面は、「バイオマスと石炭を50対50の併用で運転していく」方針。

「当時、投資した時は、火力発電がこんなに世間を騒がすことになるとは全く思わなかった。むしろ、石炭の調達は大丈夫かなと思っていたぐらいです。世の中はどんどん変化してく。それで、今後はグリーンエネルギーをやっていくと。風力などの再生エネルギーをやっていくということです」

 地球を大事にしているか─。全事業について、この意識で取り組まねばならない時代。ことに、環境・エネルギー関連に関しては、直接的にこの意識が求められる。

「はい、自分たちの責任で全てを、いわゆる再生エネルギーに変えていきたいので、理解してほしいということで100%子会社にしたと。そこが、自分たちの自己責任で変えようというメッセージです」と芳井氏。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事