2023-11-01

大和ハウス工業・芳井敬一の「『何が世の中の役に立つか』の創業精神で」

芳井敬一・大和ハウス工業社長




千葉県流山市に見る『物流で新しい街づくり』

 DPL(ディープロジェクト・ロジスティクス)─。大和ハウス工業が開発する物流施設の新ブランド名。

 このDPLで注目されるのが、今年4月に千葉県流山市に完成した『DPL流山』である。

 同社はこれまで、計365棟の物流施設(総開発延床面積1200万平方メートル強)の物流施設を造成。『DPL流山』は、同社最大の物流拠点(延べ床面積は74万平方㍍)である。首都圏で、都心から車で小1時間の流山に物流施設をつくるに当たって、何を心がけたのか─。

 単なる物流施設づくりではなく、「物流施設を中心とした街づくり」(芳井氏)というコンセプトであり、6000人規模の雇用創出という点でも注目されるプロジェクトだ。

 また、災害が多発する今、災害時には約1200人が避難できるように、〝地域で身近な施設〟にしていること。災害時、施設に関連する車路に住民の自家用車が避難できるように設計されている。

 さらに、被災した地区に支援物資を届ける供給ハブ拠点になっており、地域との共存共栄を図っていることがDPL流山の特徴だ。

 物流拠点に、新しい街づくりの要素を加えた動機とは何か?

「流山市が真剣に考えられたことがまず第一ですね。そこにタイミング良く、われわれとか(傘下の建設会社)フジタが入って、街のコンセプトを決めようという時に、本気の行政がいらっしゃったと。それと住民の理解もしっかりしていただき、全てが理想的に運んだということでしょうね」と芳井氏。

「米国にもようやく商業施設部門が出て行っているんです。大きくはないんですが、ロサンゼルスとサンフランシスコの二か所でテストとしてやっています」

 商業用不動産の賃貸支援を手がけ、収益性を上げるリーシング。

「そのリーシング力(入居者獲得力)が海外で通用するのか。もっと学ばなければいけないので、今、挑戦中です」と芳井氏は語る。

 三本柱の一角、商業施設は、コロナ前と後で事業環境がガラリと変わった。

 コロナ禍で伸びた企業もあれば、縮小した企業もある。強弱がついた商業分野で、「再生が図れる可能性もありますし、一方で、スクラップして、業態を変えるというチャンスもある」として、各地にある商業施設の再生、あるいは再耕を考えていきたいと芳井氏は言う。

 同社の中興の祖とされる樋口武男氏(1938年=昭和13年生まれ)は2001年に社長に就任、会長兼CEOを経て、2020年最高顧問に就任。

 その樋口氏は創業者・石橋信夫の思想を受け継ぎながら、〝熱湯経営〟や、先の先を読む〝複眼経営〟で、フジタ買収などのM&A(買収・合併)や米国進出のきっかけをつくった。

 そして、2017年(平成29年)11月、社長に就任した芳井氏はコロナ禍初年度を(2021年3月期)を除き、増収増益の経営を実現。

 社長就任から6年近くが経つ。コロナ禍というマイナス環境の中で、物流、商業、そして海外部門など伸ばすべき所を伸ばし、見直すべき所は見直すという芳井氏の経営である。

 その観点から、同社は今春、ホテル、ゴルフ場などのリゾート部門(旧大和リゾート)の売却に踏み切った。

 コロナ禍にあって、「しんどかった。ホテル経営も大きな影響を受けたし」と芳井氏は語り、「ただ、(売却した)相手方はわたしたちのリゾートを最大評価してくださったし、上昇気流に乗る可能性は高いので、頑張ってほしい」とエールを送る。

 環境激変は続く。創業以来の「社会課題を解決する」という基本軸に立って、新しい経営構造を追求する芳井氏である。

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