2023-11-01

大和ハウス工業・芳井敬一の「『何が世の中の役に立つか』の創業精神で」

芳井敬一・大和ハウス工業社長




「困っている人」たちの課題の解決を!

 大和ハウス工業は戸建て・賃貸住宅・マンションなどの住宅事業、商業施設事業、そして物流施設事業を三本柱としている。1990年代は、住宅事業が会社の成長を牽引したが、今は物流、商業施設事業が伸びているのが特徴だ。

 2023年3月期は売上高約4兆9081億円、営業利益約4653億円で売上高営業利益率は9.4%と高収益を挙げる(ちなみに、2022年3月期は売上高約4兆4395億円、営業利益は約3832億円)。

 コロナ禍入りしての2021年3月期は売上高約4兆円台をキープしたものの、減収減益となった。しかし、その後、再び増収増益の基調を取り戻している。

 今、住宅事業では建築資材の価格高騰や建設現場での人手不足が目下の悩み。特に、注文住宅はモロに建築資材のコストアップの影響を受けている。そこで、当面の間、比較的コストを抑制できる建売り住宅の販売比率を高めようとしている。

 環境が激変し、時代が大きく移り変わろうとする中で、芳井氏はどうガバナンスを利かせていくのか。

「社会課題の解決を、ということでは、再生エネルギーへの取り組みもそうですし、また超高齢化社会でのまちづくり、団地再生もそうですね。環境改善を含めて、社会を良くしていくという活動にグループを挙げて取り組んでいきたい」

 芳井氏は、同社の歴史をヒモ解きながら、「そういう考えは弊社グループの根底にありますし、そのDNA(遺伝子)を大事にしていきたい」と芳井氏は続け、「要は、困っている人たちにどう働きかけていくかということです」と語る。


空き家が増える街をどう再生するか?

「困っている人たちに、どう働きかけていくか」─。この問題意識は日本の高齢化問題とも重なってくる。

「そうですね。いわゆる僕たちがつくってきた街、そういった街が今、高齢化に悩んでいる。または、悩んでいるだけではなく、困っておられる。これは、政府がよく言っている空き家対策とも重なります。本当に廃墟化した家が残っている」

 空き家が増え、その街に人気がなくなるという現象。このことにどう対応していくかという社会課題である。

「そうなった時に、街をつくった責任を踏まえて、しっかり対応していくと。それと共に新しい人たちが住みたいという街に変えていく。大きな社会課題だし、僕たちの責任が問われていると思うんですよ」

 日本は、世界に先んじて、『超高齢社会』となり、高齢化が一段と進む。それに伴い全国各地で空き家が増加。街の再生をどう図るか─という社会課題に、芳井氏は真正面から取り組む方針を語る。

 人口減少に伴い、少子化・高齢化が進む。65歳以上の高齢者が全人口の7%以上を占める社会を『高齢化社会』と呼ぶが、日本がそうなったのは1970年(昭和45年)で、高度成長の真っ只中であった。

 そして、『高齢社会』(高齢者人口が全体の14%以上)になったのは1994年(平成6年)。日本経済が低迷し、〝失われた30年〟に入るトバ口であった。

 そして、『超高齢社会』(高齢者人口が全体の21%以上)になったのは、リーマン・ショック前の2007年(平成19年)のこと。現在の高齢者人口の比率は29%と、全人口の3割近い数字にハネ上がっている。

 この結果、社会保障費(年金、医療、介護)は膨張し続け、2023年度は約140兆円にのぼる。社会保険料を誰がどう負担するのか。また、社会保障費の4割をまかなう公費(税金)はどうあるべきかという国の財政問題にまでつながってくる。

 一方で、少子化も進み、これは大学教育の在り方にまで波及し、すでに大学の統廃合・再編問題を引き起こしている。

 こうした環境が激変する中での、〝街の再生〟であり、〝団地の再生〟である。

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