2023-09-15

日本ペイント・喜田益夫社長に直撃、「現場・現物・現実の『三現』主義に徹していると、課題解決の道筋が見えてくる」

喜田益夫・日本ペイント社長




経済的価値に加え、社会的価値の向上を

 ─ 喜田さんは社長に就任して5年目ですが、社内に訴えていることは?

 喜田 かつて当社は、どちらかというと会社の経済的価値の向上、つまり売り上げ、利益を高めることを目指してきたと思います。もちろん、収益の向上は今も目指していることではありますが、会社の価値はそれだけではないのではないかと。

 2010年以降くらいからはESG(環境・社会・ガバナンス)、さらにSDGsも言われるようになりました。ですから社会的価値の向上を目指す必要があると考えました。社会貢献、そして塗料を通じて社会課題の解決ができる力を付けていこうという話をしているんです。

 ─ 具体的な商品は出てきていますか。

 喜田 おそらく業界で最初だったと思いますが、コロナ対策の抗ウイルス・抗菌塗料を出しました。元々は17年に設計していた塗料なのですが、当時の価値は匂いがしない塗料で、抗菌は余り求められていませんでしたが、コロナ禍で、その塗料が持つ抗ウイルス・抗菌の機能に改めて注目したわけです。

「プロテクトン」という塗料シリーズですが、「見えない不安に見える安心を」というフレーズで訴求しています。まさに当社の社会的価値向上、社会貢献につながると考えていますから、今後もSDGs商品を出していきたいと思います。

 また、「パーフェクト」というシリーズで塗りやすい塗料も打ち出しています。塗装店の職人さんが作業しやすいかどうかという点に着目した商品です。これは社会貢献よりも経済的価値の側面が強いかもしれませんが、現場の方々の助けになります。これも我々が12年に最初に世に送り出しました。

 発売後、売り上げ、利益とも右肩上がりです。その後、他社も似たような商品を出してきましたが、やはり塗料業界も最初に出すことが肝心で、二番煎じでは駄目です。新たな商品を創造することに加えて、世に出す速さも勝負のうちです。

 ─ 開拓者としての努力が大事だと。

 喜田 ええ。そして販売店さんといかに協調して売っていくかも大事になります。

 もう一つ、社会貢献で言えば、「サーモアイ」という遮熱塗料のシリーズがあります。暑い夏などに室内温度の上昇を防ぐ機能を持っています。

 社員に対しては「三現主義」でやっていくという話もしています。現場というと技術の話になりがちですが、営業にも内勤にも現場はあるわけです。

 それぞれの現場があり、現象を確認し、最後は現実を知ってどうするか決めていくという流れは変わらないと。そういう仕事をすることで、部署を異動しても、それが生きていく糧になるし、自分で仕事を面白くできると話をしています。

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