2023-09-15

日本ペイント・喜田益夫社長に直撃、「現場・現物・現実の『三現』主義に徹していると、課題解決の道筋が見えてくる」

喜田益夫・日本ペイント社長




原材料は高騰、製品値上げの動向は?

 ─ 喜田さん自身の仕事は、自動車塗料の後、汎用塗料に移ったわけですね。

 喜田 ええ。今から11年前に汎用塗料の技術部長になり、技術の強化に携わりました。自動車塗料は塗った後に140度で焼いて硬化させるのに対して、汎用塗料は常温で天日干しして自然と乾かすものですから、設計のイメージも、使う材料も全く違います。

 その後、14年に汎用塗料事業本部長になり、全体を見る仕事をするようになりましたが、15年に会社はホールディングス体制になりました。この時に、私が見ていた日本ペイント汎用塗料事業本部と、旧日本ペイント販売という販売会社が統合し、新生日本ペイントとなりました。

 日本ペイントが手掛けているのは、建築用塗料、鋼構造物用塗料、自動車補修用塗料、DIYなどで使われる家庭用塗料の4つです。

 ─ それぞれの塗料の需要動向はいかがですか。

 喜田 建築用は昨年に比べて上向きになってきました。鋼構造物は自治体向けの公共物需要があるので、一定のスパンで出ていくという意味では堅調です。家庭用塗料はコロナ中は「巣ごもり需要」で伸びましたが、足元ではピークに比べると落ちているという状況です。

 ただ問題は、原材料が高騰していることです。我々の業界は全体で値上げをしている形になっていますが、21年から値上げを始め、現時点までに3回実施しています。徐々に効果が出始めたかなというところです。

 ─ 製品値上げは日本全体の課題ですね。海外に比べても遅れていると言われます。

 喜田 ええ。海外では年に3、4回の値上げをしていますが、日本でそれをやったら買ってもらえません。日本では販売店は各社の塗料を併売しており、日本ペイントだけを売っているお店はありません。例えば我々だけが一気に値上げをしたら、他社の塗料を売りますという話になる。そうすると我々の販売量が減りますから、状況を見ながら動く必要があります。

 ─ 原材料高騰が収まる気配はありませんから、日本全体で製品値上げ、賃上げの好循環をつくる必要がありますが、なかなか難しいですね。

 喜田 我々化学系企業は、他の業界と比較しても地道な仕事です。我々のビジネスを決めるのは販売店さん、塗装店さん、ゼネコンさんといった特定のお客様です。

 この方々が「日本ペイントの塗料はいいね」、「すごく塗りやすいね」と言って下さらないとビジネスが成立しないんです。

 ですから、最後はそうしたお客様にアプローチしていかないと、ビジネスは拡張していきませんから今、その仕掛けを進めているところです。例えば施工店の方々が、我々に注文しやすくなるようなアプローチをすることで、間に入る販売店さんの利便性向上や業務効率化を図る、といった形です。

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