「体力があったからこそ、コロナ禍を耐えることができた」と話すのは森トラスト社長の伊達美和子氏。オフィス事業、ホテル事業を主力とする森トラストだが、コロナ禍にあっても「いずれ需要は戻ってくると見ていたので不安感はなかった」と振り返る。その後、日本企業のオフィスには7割ほどの人が戻り、国内外の観光客がホテルを訪れる状況で、業績もコロナ前を回復する勢い。今後に向け伊達氏が見据えているものとは。
3年余のコロナ禍をいかに乗り越えたか?
─ 3年余のコロナ禍は、オフィスのあり方の見直しなど様々な変化があったと思います。教訓をどう捉えていますか。
伊達 教訓としては、やはりいかに体力を維持していくかに尽きたと思います。我々に体力があったから3年、もしくはさらに長引いたとしても耐え得るであろうと思っていましたから。そして必ずいつかは需要も戻ってくると考えていましたから、不安感はさほどなかったですね。
もう一つは、ポートフォリオを分散していたことと、そのバランスが取れていたことが大きかったですね。この考え方は今後も変わらないと思います。
─ 森トラストは大きくはオフィスとホテルやリゾート事業を手掛けていますが、それぞれ状況は違いましたね。
伊達 ええ。不動産開発事業という意味では同じだったかもしれませんが、比較的安定的で、急激な変化は起きづらいオフィス事業と、将来性はあるけれどもボラティリティ(変動性)が高いホテル事業とを、バランスよく投資し続けていたんです。
また、ホテル事業の中でも都心とリゾート、エリアを分散していました。都心はビジネス、リゾートは観光が中心です。コロナ以前はインバウンド(訪日外国人観光客)が好調でしたが、投資先としてはインバウンドに偏るのではなく、ドメスティック(国内観光客)のニーズのある場所も意識的に開発していました。お客様のニーズがどちらかに偏っても対応できる場所を戦略的に選び投資していたのです。
─ 米国での不動産投資も進めていますね。
伊達 2016年、私が社長に就任した後から、米国投資を積極的に進めてきました。この投資が安定的であったことと、コロナ禍に入りながらも、立地の良さから強い引き合いもあり、高額で売却できたことも貢献していますね。現状の為替から見ると、一部の資産をドルで保有していることもポジティブだと思います。
投資という観点では円安は少し厳しいですが、日米で金利差がありますから、この部分をうまく使いながら、バランスが取れるところを探しているという面はあります。