─ 楽天グループなどライバルとの競争には、今後どのように臨みますか。
林野 今は「経済圏」同士の競争になっています。楽天経済圏があり、ソフトバンクもPayPayを軸とした経済圏を築こうとしていますし、三井住友フィナンシャルグループも、カードに加えてTポイントとの提携による経済圏を築いている。
それと競争して勝つことができる経済圏というのは、資本の関係にはこだわらないけれども、ゆるやかな絆で結ばれ、「ギブ&テイク」が成り立つ関係です。そして、その顧客の相互交流が成り立つ仕組みの方が強いのではないかと考えているんです。
─ 楽天や三井住友FGとは違う枠組みを築いていくのだということですね。
林野 そうです。そして、こうした経営政策を考えていくことが、まさに今の私の仕事だと思っています。そして、今我々が考えているゆるやかな絆で結ばれた経済圏をつくることができれば、少なくとも楽天経済圏には対抗できるだろうと。一方で三井住友FGは強敵になると見ています。銀行が持つネットワークはやはり強い。
─ 経済圏競争では、他にない持ち味を持つ必要があると。
林野 ええ。相手がやっていないことをやらないといけません。我々の場合にはデジタルトランスフォーメーション(DX)とグローバルが強みです。これをさらに伸ばしていきます。
─ 改めて、林野さんが堤清二さんから教わって印象に残っていることは?
林野 最近思い出すのは「教育ほど難しいものはない」という言葉です。堤さんは社員教育に情熱を傾けたけど、成果を出すのは本当に難しいと言っていました。確かにあらゆる機会を設けて、自ら教育を手掛けていましたから、教育が一番大事だと考えていたのだと思います。
─ 人の流動性が高まる今ですが、企業へのロイヤリティ(帰属意識)をどう考えますか。
林野 私は何とか社員に報いたいと考えて全社員を対象に「ファントム・ストック」(株価連動報酬制度)に取り組んでいます。
ファントム・ストックとは架空の株式を従業員へ付与する制度です。実際の株式とは異なりますが、株式と同じく、取得時との差益が得られたり、配当金を現金で受け取ることも可能です。売買はできません。
当社では単体の経常利益に対して、本決算での実績値が上回った場合に、その超過額の一定割合を「決算賞与」として、3分の2を現金、3分の1をファントム・ストックで支給します。23年3月期は1人当たり約53万円の支給となりました。
役職も年齢も関係なく平等に支給しているのが、当社らしいのかなと。こうした取り組みで、みんなに「来年また頑張るぞ」と思ってもらえたらと思っています。